My Magic Dairy

「三津さんは急須じゃ。

2024年04月12日

「三津さんは急須じゃ。桂さんは三津さんに温かいお茶を注いでくれ注いでくれとねだる湯呑み。
三津さんがおらんと空っぽで湯呑みの役割すら果たせん。」


「役立たずですね。」


「辛辣やのぉ。」


中岡はまぁ待てと話を続けた。


「じゃけん桂さんを使える湯呑みに出来るのは三津さんだけや。」


「幾松さんだって注いでくれますよ。」


「あの人は徳利じゃ。湯呑みは酒を注いで欲しくない。」 https://mathewanderson.animech.net/Entry/3/ https://anderson.cosplay-navi.com/Entry/5/ https://carinaa.blog-mmo.com/Entry/3/


三津はうーんと唸った。中岡の喩えが分かるような分からないような。
徳利の中身を入れ替えたらいいとか,湯呑みからお猪口に成り変わればいいとか屁理屈ばかり浮かんでくる。


「そんなに寄りを戻したくないんか?」


だからそんなに否定的なのか?と中岡は三津に詰め寄った。喩えが三津に伝わらなかったのが悔しいのか必死だった。


「あー……そうなのかもしれません。」


「それは入江君がおるからか?」


「いやぁ……九一さん居なくても寄りを戻すかは……。居なきゃ居ないで文さん達と女同士でわいわいしてるのが楽しいですし。」


「とうとう男は必要とされんくなるのか……。」


それは辛いとしょんぼりしたので,私がそう思うだけだと言っておいた。中岡が気に病む事ではない。


「三津さん今の暮らしが気に入っとるん?」


「はい。楽しいです。気が楽です。自分の事だけに集中出来ますから。」


中岡は目を細めてそうかと呟き,それ以後桂の話は出さなかった。






「あー帰って来たぁ……。」


萩の匂いだと空気を肺いっぱいに吸い込んだ。どんな匂いかは喩え難いが京とは全く違う澄んだ空気だ。


「いやぁお疲れやったな!」


中岡はちょっとした楽しい旅行だったと言わんばかりの笑顔で三津の頭を撫で回した。
いつも思うが赤禰にしろ中岡にしろ,何故そんなに犬を扱うように触るのか。


「中岡さんは今日はこちらに泊まっていかはるの?」


「いや,これから坂本と落ち合うけんこのまま次に行く。」


「え!?このまま!?」


ちょっとぐらい休めばいいのにと言ってみたが,中岡はいつもの事だとにっと笑った。


「ホンマに助かった!ありがとう!」


「いえいえ,中岡さんこそお疲れ様ですよ。」


自分を京に連れて来いと言われるがまま長府へ足を運びそれから萩まで。
体力のない女を連れて京まで戻り,それからまた長州へ。それなのにまた旅立つとは。


「私はホンマにいつもの事やき。そしたら三津さん,幸せに暮らし。」


元気でな。ではなく,幸せに。どう言う意図か分からなかったが力強く頷いた。中岡を見送った三津はひとまずお店に向かう事にした。無事帰って来た報告と明日からまた働けると伝える為に。


「ただいま戻りましたー。」


暖簾をくぐると思わぬ人物達と目が合った。


「あっ!姉上お帰りなさいませ!」


「良かった!帰って来られたんやね!」


「フサちゃん?すみさん?」


襷掛けに前掛け姿の二人がお帰りお帰りと三津に抱きついた。


「お三津ちゃんおらん間働いてくれとったそ。お三津ちゃん,お帰り。お疲れ様。」


穏やかな笑顔のしずに三津は目を潤ませながらただいまと答えた。


「お帰り。大事ないか?」


「一之助さん,ただいま。大丈夫です。元気です。」


三津がふにゃっとした笑顔になったのを見て,一之助も微かに笑みを浮かべた。


「お帰りお三津ちゃん!大変やったなぁ!昔の男がお三津ちゃん連れて来いって駄々こねて騒いだって。」


『あぁ,そういう事になってるのね。』


客にかけられた言葉に苦笑いでそうなのとだけ答えた。


「三津さん引く手数多やけぇね。その男も独占欲強くて未練たらたらで情けない。」


『中岡さん,私より辛辣な方がここに居ますよ。』


私なんか辛辣なうちに入らないよと三津は思う。三津の中ですみと文は最強だ。


「それでかたは付いたん?」


「はい,もう最後だってちゃんと告げてみんなにも迷惑かけないように言っておきました。」


それを聞いた一之助とすみとフサは顔を見合った。
三津は流されずに帰って来た。しっかりと決別してきた。
  


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「謝らんでいい。

2024年04月12日

「謝らんでいい。三津の方から言ってくれたのが本当に嬉しいそっちゃ。抱きしめながら寝てもいい?」


入江はおいでと三津に向かって両手を伸ばした。少し赤くなった顔で目を泳がせて,小さく頷いた。
入江は自分の布団の中に入って掛け布団を捲った。これが一緒に寝ようのお誘いの合図になった。
三津は体を起こして布団から出て,遠慮がちに入江の布団に入った。


「お帰り,三津。」


やっぱり触れて温もりを感じ,匂いを吸い込むと愛おしさが溢れ出す。
会えなくて寂しくても時間が経てばやがて慣れる。だけどその分,会うと離れる前よりも愛おしさが増している。


寂しさに慣れていたんじゃなくてただ忍耐強くなっていただけ。会えない時の寂しさは募る愛情に姿を変えた。
だから今,耐えた分だけ三津を愛したくて仕方ない。
だけど三津の疲労具合を考えるとこうして抱きしめるに留めた方がいい。


「そうや。一之助君と二人で初詣行ったんやな。」 https://edward.ni-3.net/Entry/4/ https://anosmic.animegoe.com/Entry/4/ https://mypaper.pchome.com.tw/johnsmith786/post/1381775294


理性を保つ為に話題を変えた。三津から届いた文と,文からの密告書に書かれていた初詣の話題を出した。
昨年は二人で行った。一昨年は斎藤と一緒だったのを尾行してた。
あの時では考えられない今の状態に入江はくすりと笑った。「お参りして甘酒飲みました。それだけやったんですけど町中の噂になりました。」


何でそんなに騒ぐんですかね?とこればっかりは理解出来ないと首を傾げた。


「多分一之助君が女子を寄せ付けんのに三津は特別やからやろ。武人さんが女子と二人で町歩いとったら珍しくない?」


「あ!分かる!」


入江はそれと同じで,なんなら一之助は女子と喋ってるところすら滅多に見ないんだと教えてやった。三津はそんなに珍しい事だったのかとようやく理解した。


「すみは元気にしとる?」


「元気ですよー!よく一緒に夕餉食べてます。相変わらず愚兄愚兄って言ってますけど,ホンマに嫌いなら話題にすら出したくないはずやから九一さん好かれてますね。」


「そうかぁ?妹のくせに敬意が足りとらん。」


二人は他愛もない近況報告で会話を楽しんでいた。外でこっそり様子を窺っていた幾松と白石は,進展具合を確認したかったのに二人にその気配はない。
これはそっとしておこう。二人は静かにその場を去った。


『……やっと居なくなった。』


入江は楽しそうにすみや文との日常を話す三津の頭を優しく撫でた。その手を頬に滑らせてから顎に添えた。
くいっと顎を持ち上げられた三津は口を結んで目を伏せた。


「何でまだ一緒に居たいって言ってくれたん?」


「九一さんと居ると落ち着くし離れたくないって思ったから……でも九一さん引き止めてくれんかった……。」


上目で拗ねたような顔をした。冗談でもここに居りと言って欲しかったのと心内を吐露した。
入江は身震いした。自分が引き止めるのを待っていた三津が愛らしい。


「何でそんな可愛い事言うん?抱きたくなるやんか。我慢しとるのに。」


どうしてくれるんだときつく抱きしめた。それが嬉しかった三津は同じぐらい強い力を腕に込めた。


「我慢してるん?」


「するわ。あんな痕つけられるぐらいの事されとるのにそれから更に抱くのは気が引ける。三津の体が心配やけぇ。」


でも本当は抱きたくて堪らないと消え入りそうな声で呟いた。
どこまでも自分を一番に考えてくれる入江に胸が高鳴る。愛されてるってこんな感じだったなと思い出した感じがした。


「九一さん……。ありがと。」


幸せに溶けたような笑顔で入江を見上げた。


「口づけしてもいい?」


「お互い好きやのに許可いる?」


「いらんな。」


重ねては離して繰り返される口づけはだんだん深くなった。


「ごめん耐えれん。優しくするから許して。」


入江は三津に覆い被さり,三津は両手で顔を隠して頷いた。
  


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三津がまだ誰にも汚されてないと知って

2024年04月12日

三津がまだ誰にも汚されてないと知って少し気持ちに余裕は出たが体の疼きは止まらない。


恥ずかしいから灯りは消してくれと言う三津の願いを桂はいつも聞かない。
恥じらいながら悶える顔が見たいから。
でも今日は灯りを消した。ほんのりとした月明かりだけで三津を抱いた。


必死に堪えながら時折洩らす声と息遣いでその表情がはっきりと浮かぶ。
これで最後なら受け止めてと手加減はしなかった。
もう無理だと逃げだそうとする腰を押さえつけて離さなかった。


「三津,嘘でもいい。私を好きだと言って欲しい。」


冷静になれないぐらい乱されて,それでもまだ止まらない律動に三津は必死に桂にしがみついた。


「すっ……きぃっ……。」


意識が飛びそうで目の前の肩に噛みついた。その痛みさえ愛おしくて桂は目を細めた。https://carina.asukablog.net/Entry/5/ https://johnn.3rin.net/Entry/5/ https://paul.animech.net/Entry/4/


「ありがとう。愛してるよ。ずっと……。
三津,覚えていて。私にとって君は最後の人だ。もう他の人には触れない。君への想いに終わりはない。」


「嘘っ……つきっ。誰でも抱けるっ癖にっ!」


余裕がないながらに精一杯の悪態をついた。そう言えばむきになって自分の好きな所を並べてくれると思った。そんな事したって後で虚しくなるだけなのに。


「もう抱かない,この先君が離れようとも私は誰にも触れないと約束する。だから朝が来るまでは私の事を好きでいて。」


どうせそんな約束守れない。誰にも触れないなんて絶対無理だ。
もう終わるのだからそっちも勝手に生きてくれたらいいと思うのに,それを守って欲しい,私を忘れないでと真逆な事も思ってる。


ずっと耳元で愛してるを繰り返してくれる桂に,


「小五郎さん……今までありがと……。」


愛の言葉じゃなくて感謝の気持ちを,その一言だけを贈った。







日も昇らぬ薄暗い部屋で三津は怠い体を起こした。隣りで眠る桂を起こさぬようにそっと布団を抜け出した。


『起きれて良かった……。』


一切の容赦もなく,今まで溜めた欲をぶつけられた感じで全ての体力を持ってかれた。
そして身支度を整える為に鏡台の前に立ち愕然とした。首筋や胸元が痣だらけだ。


『これは襟巻で隠すしか……。』


着物を着て首に襟巻をして三津は家を出た。体中が違和感だらけで動くのが非常に辛い。


「女中さんは時間にきっちりしとるのぉ。」


玄関を出たところで白い息を吐きながらおはようと中岡に声をかけられた。


「早朝にすみません……。」


「構わん約束やき。それにこの時刻なら新選組にも見つからんやろう。そしたら帰ろうか。」


三津は黙って頷いた。「桂さんに最後の挨拶は?」


中岡の言葉に小さく首を横に振った。中岡はそれに対してそうかとだけ小さく呟いた。
薄暗い道を静かに歩いた。肌を刺すような寒さは萩とどこか違うなぁと三津はぼんやり考えた。


これから大阪まで向かいまた舟で長州へ帰る。阿弥陀寺に寄ってみんなに会って帰ろうか。突然訪ねたらみんなは迷惑だろうか。だったら真っ直ぐ萩に帰ろうか。
どっちにしろなるべく早く帰らなきゃと思うのだが,


「三津さんもしかしてやけど……全然体力ない……?」


中岡が足を止め三津をじっと見下ろした。三津は襟巻の中に顔を隠してこくこく頷いた。思うように歩けない事に気付かれていた。


「そうか。最後の挨拶は昨晩存分にしとるんやな。」


中岡に喉を鳴らして笑われて恥ずかしくて死にそうだ。


「ホンマにもう最後なんで……。もう会う事ないんで……。次はもう絶対呼びに来んとって下さい……。」


「でも分かったやろ?桂さん動かせるのは三津さんだけや。坂本と私やったらあと何日費やさんといけんかったか。三津さんは必要とされちゅうき。」


お似合いやでと笑顔で言われた。思い返せば中岡は初めて会った時も自分と桂は不釣り合いとは言わなかった。それがとても嬉しかったのを思い出した。


「でももう無理なんです……。あれこれ考え過ぎて疲れちゃうんですよ……。」


何があっても傍に居たい気持ちより傷つきたくない思いの方が勝った。一途に想う純粋さだけあればいいのに,目に見えない部分を不安に思い,見えない相手に嫉妬を抱く自分が醜くて怖ろしくて嫌いだ。
  


Posted by AmandaMonroe at 17:52Comments(0)

今まで一切政に口出ししなかった三津が介入

2024年04月05日

今まで一切政に口出ししなかった三津が介入し,さらに西郷の肩を持たれたのが桂にとっては至極気に入らない。


「三津,この話はそんな簡単な物ではない。君が口を出していい話でもない。」


それ聞いた三津は頬に手を当てて溜息をついた。


「女の事は平気で何ヶ月も待たせる癖に小五郎さんはたった一日も待たれへんのですね。」


その言葉に高杉と入江は凍りついた。いくら三津でも今の桂の揚げ足を取るのはかなりの危険行為だ。


「三津,それとこれとは話が別だ一緒にするな。」 http://kiya.blog.jp/archives/24361663.html http://hkworld.blogg.se/2024/april/entry-2.html https://blog.aujourdhui.com/jennifer9922/2703361/65378---24112---12387---12390---26469---12383---12425---30290---12420---12375---12390---12418---12425---12360---12427---12384---12429---12358---12363---12290---65379.html


まずい修羅場だ。今回はどうにも出来ないぞと高杉はだらだら冷や汗を掻いて三津を見た。


「は?別?一年近く待たせた挙句裏切った小五郎さんは私からしたらその西郷さんとやってる事一緒ですけど?」


三津は頬に手を当てたままきょとんとした顔で首を右に傾けた。何度も目を瞬かせて何で分からないの?と桂を見ている。


『可愛い顔で喧嘩売った……。』


高杉は頭を抱えた。こう言う場では大人しくしてる三津が喧嘩を売った。もう止められない。入江と高杉は無になって見守る事にした。


「しかし私には事情があって!」


「じゃあその西郷さんにも何か事情があったんちゃいます?ちゃんと事情があれば今回の事は許して話し合いします?
許されへんって言うのなら私が小五郎さんを許せんくても文句ないですよね?」


「今その話を出すのは狡い……。」


「狡い?待たすだけ待たせて裏切って,西郷さんと同じ事してるって教えてあげただけですけど?
それに私の件で害があるとすれば私が嫁に行き遅れるか生涯独り身になるかぐらいなんで大した事ないですからお気になさらず。
でも小五郎さんが話し合いの場に立たへんと長州の行く末はどうなります?それを背負ってるんでしょ?」


桂は必死に返す言葉を探して文とフサは口元を隠して笑った。それから文がすっと右手を上げた。


「桂様,私からもあえて一言言わせていただきます。」


文もあえてを強調して口を挟んだ。文の一言もかなりのズシッとくるから桂ごくりと息を呑んで頷いた。


「長州の為にご尽力くださいませ。」


その一言に全てを詰め込んだ文が格好いいと三津は惚れ惚れした眼差しを向けた。
桂は口をきゅっと結んでまっすぐ自分を見つめてくる文とフサの目をしっかりと見た。
怒りで二人に託された吉田と久坂の想いを忘れてしまっていた。


「……ここ最近君達に思い知らされる事ばかりで本当に情けないとしか言葉が出てこない。」


桂は俯いて口元だけで笑った。


「中岡君からの報せを待つとしよう。坂本君すまない。どうぞ食べてくれ。」


その言葉に坂本はまたにっと笑った。実はかなりの空腹だったとおにぎりに手を伸ばした。桂は三津の味噌汁を口にしてほっと息をついた。


「よし,丸く収まったし呑むか。」


「ええのぉ!」


『また呑むのか……。』


三津は今日は呑まない,もしくは呑んでも寝ないを目標に掲げて文達と広間に酒の用意を持って行った。
だが坂本の話がよほど面白いのか男たちは坂本を囲んで盛り上がっていた。


『今日は無事に終われそうやな。』


お酌も文とフサが引き受けてくれたから三津はお酒のおかわりを用意する為広間と台所を往復するのに徹した。なんて楽な仕事だろう。
そう思っていたがそう簡単にいかないのが人生というものである。


「おぉ!肝の据わったお嬢ちゃん!こっち来て一緒に呑み!お前さん面白いきぃ,ちぃーっと話し相手してくれんが?」


坂本から誘われてしまった。これは断る訳にはいかない。


「少しだけ……。」


少しだけ。そんな言葉は酒の席では通用しない。それに連日の宴会でちょっとばかし呑めるようになってしまったのが良くない。
それでもこのくわっと一気に体温が上がるような喉が焼けるような熱さに三津はくぅーっと目を閉じた。


「美味そうに呑むなぁ。」


坂本さん違うそうじゃない。三津は赤くなった顔を左右に振った。


「せっかくやきもう一杯。」


「坂本さん,三津は下戸なんでそれで終わりで。」


二杯目が注がれたところで桂が止めたが三津はそれなら一杯の時で止めてくれよと上目で睨んだ。
そして二杯目をやけっぱちで呑み干した。


「いい顔しとる。お嬢ちゃん普通の女中さんやないんやな?桂さんに面と向かってあんなん言う娘は中々おらん。」


坂本は豪快に笑って三津の頭を撫で回した。
  


Posted by AmandaMonroe at 00:58Comments(0)

入江はそのまま広間を覗きに行った。

2024年04月05日

入江はそのまま広間を覗きに行った。そこにはうつ伏せて動かない桂の姿。悲壮感が漂っている。


「桂さん,三津が手が痛いって言っちょるそ。」


「……私のせいだ。」


入江の声に怠そうに体を起こした。胡座を掻いて背中を丸めて入江の方を見やしない。


「知っとる。文句言えんって言いながら何で三津に強く当たるそ?その分三津は桂さんを嫌いになるやろうから私はいいですよ?でも三津はまた痛い思いしちょるんですよ。」


「どうしても……嫉妬が抑えられん……。」 http://hkworld.blogg.se/2024/april/entry.html https://blog.aujourdhui.com/jennifer9922/2703360/25991---12398---35328---33865---12395---19977---27941---12399---38738---12374---12417---12383---38996---12391.html https://yvision.kz/post/976247


「それ三津に説明しました?」


「してない……。」


「じゃあ説明して来てください。好きで好きで堪らんから嫉妬が抑えられんのちゃんと三津に言って。傷付けたの桂さんなんやけぇそこも責任取らんといけん。冷やす用の水持って行ってください。」


「分かった……。」


桂は重い腰を上げて桶に水を張って相部屋に行った。恋敵にそこまで面倒みてもらって情けないの一言だ。


「大丈夫かい?」


入江が戻って来ると思ってた三津はせっかく泣きやんだのに桂を見てまた泣きそうになった。


「手を……すまない……私の方がろくでもない事をしてるのは分かってるのに……君を好きすぎて嫉妬が抑えられないんだ……。小さい男でごめん……。」


桂は痛い手を出してと両手を差し伸べた。三津は目を伏せて右手を出した。
桂はその手を優しく両手で包んだ後に桶の水にそっと浸けさせた。


三津は顔を背けたまま口も堅く結んで桂に息苦しい重圧を与えた。この不穏な空気に耐えかねてさっさと出て行ってほしい。
せっかく忘れかけていた腹立たしさや苛立ちや変えられない過去へのもどかしさが渦巻いて心中穏やかじゃいられない。


そこへ小さな足音が近付いてきた。フサだなと気付いた三津が障子の方に目を向けると姉上と呼び掛けられた。


「どうしたん?」


「あの,湯を沸かし直したんで浸かりませんか?」


「ありがとう,すぐ行くわ。」


フサは外から声を掛けるだけで中には入って来なかった。三津は桶から手を上げて着物の袖で水気を取り,そこに桂がいないかのように湯浴みの用意を持って部屋を出た。


「背中流そうか?」


出てすぐににんまりと笑う入江と鉢合わせた。


「阿呆。」


ふてぶてしく吐き捨てて横を通り過ぎた三津を見送って入江は部屋に入った。


「せっかく修復出来かけてたのに自滅するなんて馬鹿な人だなぁ。」


入江は肩を落として灰になりかけている桂の前に座った。「お前がフサちゃん使って三津を外に出してくれなければ息できなくて死んでたよ……。」


あの無言の時間は苦痛でしかない。あれは私でも耐えられないと入江は笑った。


「私としては明日の件に集中出来るように仲直りしといてほしいんですけど女心は難しいけぇ今回は一旦持ち越すしかなさそうですね。
もう広間に戻ってはよ寝てください。私も今日の山登りで体力使い果たしとるんで眠い……。」


入江は大欠伸をしてから三津が戻るまで起きていられたら機嫌は取っときますよとまた笑った。


「何で恋敵にここまで気を遣われなきゃいけないんだ……。」


「だから敵だと思わず共有する仲間って思ったらどうです?そしたら私が抱いたとしても“三津を悦ばせてくれたんだなぁ。よし次は自分が悦ばそう!”って感じになりません?」


「ならん。」


きっぱりと言い切った桂を頭が固いとからかうように笑った。


「入江さーんちょっといい?」


文の声がしたかと思えば返事をする間もなく障子を開けられた。


「なぁ,せめてどうぞって言われてから開けようや。」


「今日白石さん家に帰るの面倒やけぇ広間でフサちゃんと三津さんと寝るけぇ桂様の布団と三津さんの布団入れ替えていい?」


「人の話聞けや。」


文は入江など目にも留めずいいですか?と桂を見ていた。


「別に構わないが……。」


「私は三津と寝たいけぇ文ちゃんとフサちゃんは桂さんと川の字で寝り。」


「私は大丈夫やけどフサちゃん危ないやん。」


この人十三歳にも手を出すのにと冷たい目で桂を見た。その視線と言葉は容赦なく桂の心を貫いた。


「フサちゃんは桂さんなんかお断りやろ。それに今日は三津抱きたい気分やけぇ邪魔せんで。」
  


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「桂さんも嫌でしょ?練兵館に居た頃に

2024年03月12日

「桂さんも嫌でしょ?練兵館に居た頃に相手した女が追っかけて来て三津さんと遭遇するの。考えただけでも怖いですよね。」


入江は怖いもの見たさでちょっとその修羅場は興味あると笑った。どうせならこっ酷く振られたらいいとまで言った。


「稔麿も九一もくだらん妄想はやめろ……。」


夢に見そうで怖い。それが正夢になっても怖い。


「それで赤子なんざ連れてたら本当に洒落にならんな。」


久坂までその悪い冗談に乗っかった。乗っかったはいいがもし本当にそんな女が赤子と現れたら三津がどれほど傷つくだろうと想像した。
そう思うと物凄く腹が立った。


「本当にそんな女が現れたら貴方の首はねてもいいですか?」 https://mathewanderson.animech.net/Entry/2/ https://anderson.cosplay-navi.com/Entry/3/ https://carinaa.blog-mmo.com/Entry/2/


「玄瑞,勝手に悪い妄想の果てに私の首をはねるなど物騒な事を言うでない。」


余りにも久坂が真剣な顔で言うもんだから桂も内心どきどきした。


「それは置いといて彼女に三津は会わせないと言う事で宜しいですか?」


このままじゃ話が終わらんと吉田がまとめ役に回った。そこで桂もようやく平常に戻った。


「あぁ。それで構わない。だから三津にも彼女が我々を探してるのは伝えなくていい。」


それでこの件は終わりだと解散させられた。


「そう言えば三津さんは?帰って来てから姿もなければ声もしない。」


入江が何で?と首を傾げると久坂と吉田は額に青筋を浮き上がらせた。


「とんだ不届者がいてね。あろう事か三津さんの顔をぶったんだ。だから安静にさせてる。」


「三津さんの顔をぶった?」


入江は瞬きも忘れて静かに怒る久坂の顔を呆然と見つめた。「ぶった奴はすでに桂さんと玄瑞から裁きを受けてるよ。」


入江が戻ってくる四半刻ほど前の出来事だ。杉山から三津に絡んだ奴らを聞き出し,


「最近刀を抜かないから鈍っちゃってね。ちょっと相手してくれないか?」


なんて呼び出して木刀でボッコボコにした後,見計らったように現れた久坂が手当と称して傷口に特製の劇薬を塗り込んだ。


「お陰でしばらくは動けないようだからまた復活した頃に俺と九一がまた罰を与えればいいと思う。
きっと三津は暇してるだろうから見舞いにでも行こうかね。」


「手を上げた理由は?」


屋敷内でそんな愚行を働くなんて命知らずがと入江は心の中で吐き捨てた。前の吉田なら確実に斬り捨ててただろうなと思う。


「三津に対して情婦と罵り桂さんをも愚弄したが反論されて激昂。途中杉山が助けに入ってくれたが少し遅かった。」


吉田は淡々と答えたが思い出すとまた腸が煮えくり返る。親指で鍔を押上げては離してを繰り返していた。
話を聞いて呆然とした入江だったが徐々に怒りが込み上げてきた。


「三津,入るよ。」


「はーい。」


吉田が呼びかけると明るい声と共に障子が開かれた。目の前の三津に入江はくっと喉を鳴らした。


「何処の稚児さんかと……。」


頬には久坂の湿布薬を貼られ,それが落ちないように顎の下から輪郭に沿うように手拭いを当てられて頭の上で結び目が作られていた。
冗談はさておき未だに腫れて見える頬に入江は顔を顰めた。


「聞きましたよ。災難でしたね。守れなくてすみません。」


「入江さんが謝ることやないですよ!私が生意気な口きいたからで!それにもう痛くないですから大丈夫です。」


大丈夫を連呼して笑う三津に三人は自然とほっとしていた。
この笑顔にほんわかした雰囲気に包まれた所に忙しない足音が響いてきた。


「久坂さんいらっしゃいます!?あのアヤメが!
……え?三津さんどうされたんです?」


珍しく慌てた様子のサヤが息を切らして久坂を捕まえた。着物の裾を掴んだまま三津の姿にぽかんとした。


「ちょっと……。それよりアヤメさんがどうかしたんです?」


「あぁ!出先で怪我をしてしまってっ!」


それを聞いて四人は急いでサヤについて玄関へ向かった。そこには三和土に座り込んですすり泣くアヤメが居た。
  


Posted by AmandaMonroe at 21:07Comments(0)

「私の事は何とでも仰っていただいて

2024年03月12日

「私の事は何とでも仰っていただいて結構ですが桂さんを悪く言うのは止めてください。腰抜けではありません。あの人の考えもろくに分かってないからそんな風に言うんでしょ?
上辺だけで見る前に中身を見る努力をしてください。」


三津に真っ直ぐな目を向けられ反論されて二人はカチンときた。女の癖に生意気なと言う目で睨まれてるのは三津だって分かる。


こう言う絡み方をしてくるのは男としての威厳や自尊心なんかにこだわっているからだ。そんな建前だけのものなんかに囚われてるから駄目なんだ。そんなくだらない物なら砕いて壊してしまいたい。


「腰抜けに抱かれるしか能のない女が。」 https://johnn.animech.net/Entry/3/ https://johnn.anime-cosplay.com/Entry/3/ https://johnn.blog-mmo.com/Entry/3/


忌々しいと舌打ちをして吐き捨てた。


「そんな能なしでも相手は選びますよ。間違いなくあなた方のような口だけの人達は絶対に選びませんから。」


確実に男達の威厳と自尊心にヒビを入れた。結構効いたのかお返しに全力の平手打ちを見舞われた。
殴られたのは頬だと言うのに脳が揺れてぐらりと体は廊下に投げ出された。男と女の力の差は歴然でこう言う時に女って損だなぁと三津は衝撃を受けた頭で変に冷静に考えていた。


もう一度男が手を振り上げたのがやけにゆっくり見えた。その手が振り下ろされるのをぼーっと眺めているとその手はピタリと止まった。


「どんな事情であれ女に手を上げる男は武士の風上にもおけんぞ。そんな奴があの人を腰抜けだとは片腹痛いわ。」


男の背後からその手を掴み尋常じゃない威圧感を二人に与えた。


「情婦の肩持つのかよ!杉山!」


「情婦じゃない。三津さんだ。お前らだって飯作ってもらって部屋も綺麗に整えてもらって縫物してもらって世話になってるだろうが。そこまで言うなら三津さんの世話になるな。」


杉山は掴んだ手にギリギリ力を込めた。男は情けない悲鳴を上げてやめてくれと叫んだ。


「話し合いで解決せんのならここは武士らしく果たし合いで決着つけるか?その方が手っ取り早くて俺はいいが。」


折角穏便に済ます為に刃傷沙汰は避けたのにと杉山が呟くと二人は顔を真っ青にして逃げ出した。


「……すまない声がしてたのは分かったんだがこうなってたとは。痛かっただろ。」


杉山は屈んで三津の前に右手を差し出した。三津はその手を掴んでへへっと笑った。


「ありがとうございました杉山さん。」


「松助だ。」


間髪入れずに訂正されてへへっと笑った目元が引き攣った。


「……松助さん。」


名前で呼ばれて満足げな表情を浮かべて三津を引っ張り起こした。


「痛かったろう。冷やさねば。久坂は……出掛けてたな。」


「自分で冷やせるので大丈夫ですよ!それにあんな言い方したんで自業自得です。」


突然桂の女としてここへやって来たと言うだけでも受け入れられない話なのに,サヤやアヤメ程の仕事もせずのらりくらりとしている癖に出しゃばってしまった。


「いや,三津さんは正しい事を言ったと思う。それに女に手を上げる奴は男として終わってる。」


庇ってくれた辺り杉山も桂が刀を抜かないのは理解してくれてるんだと思った。すると自然と気は緩む。この屋敷内でも数少ない味方だ。


「それより早く冷やさんと……。」


杉山の手のひらが三津の左頬に触れようとした時,


「何してんの?」


杉山の右手を吉田が掴んだ。そして左頬を赤く腫らした三津を見てカッと目を見開いて杉山を睨みつけた。「杉山!貴様!」


「え!?吉田さんちゃう!誤解!松助さんは助けてくれたの!!」


今にも胸ぐらを掴みかからんとする吉田の胴にしがみついて必死に止めた。


「そうだ,くだらん言いがかりつけて正論で返された事に腹を立てて手を上げた馬鹿がいる。
助けるのが遅くて怪我させてしまった。脳にも衝撃を受けたようだから部屋で休んでた方がいい。」
  


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藩邸に逃げ帰った桂と三津は息を切らしながら

2024年03月12日

藩邸に逃げ帰った桂と三津は息を切らしながらも二人で大笑いした。
総司の姿が見えなくなった所で止まればよかったのに,別に誰も追ってきてないのにずっと二人で走っていた。それに気付いたのは藩邸の門が見えた時だった。


「やっと……撒いたって思ったけど……。」


「そもそも……誰も……追ってきてませんよね?」


顔を見合わせて何してんだかと笑った。
それだけ総司を脅威に感じていたって事かもしれない。絶対に捕まりたくない。離れ離れになりたくない。互いにそう思って冷静さを欠いた。


「お帰りなさいませ。とても楽しそうですけど随分息が乱れてません?」 https://carina.asukablog.net/Entry/4/ https://johnn.3rin.net/Entry/4/ https://paul.animech.net/Entry/3/


サヤの出迎えに二人はへらへら笑うだけで声が出なかった。流石に喉も乾いたし息も整えなければ。
ひとまず玄関先で水をもらって落ち着いてから中に入った。


「本当に歩く問題児だね。外出の件は考え直しだな。」


「迷惑かけたくないので外出は諦めます。」


今日で充分楽しかったからしばらくは大人しくしてると笑った。


「無事に帰って来たと思ったけどそうでも無かった?」


二人の声を聞いてふらりと吉田が現れた。歩く問題児とは?何をやらかしたんだと上から三津を見下ろした。


「変な偶然があってね。二人で慌てふためいて走って帰ってきてしまった。」


「二人して阿呆みたいですよね。ふふっ。」


緩みきった二人の空気に吉田の苛々が募る。三津の幸せは願っているが,やはり桂と幸せそうにしているのは腹立たしい。


「何?馬鹿みたいににやけた顔して二人で見つめ合って気持ち悪い……。」


思わぬ侮辱に桂と三津は目を丸くして顔を見合わせたが二人でぷっと吹き出した。


「あぁ,周りからすればそう見えるだろうな。」


桂は今日一日の三津の行動を思い返しては笑いを噛み殺した。


「そうだ,サヤさんに今日はみんなと夕餉を取ると伝えてきてくれないか?」


今日は何だか気分がいい。桂は三津に台所へ向かわせた。三津もそのまま手伝って来るとウキウキ跳ねるように台所へ行った。


「……二人してご機嫌ですね。気持ち悪いです。ところで何をそんなに慌てて戻って来たんです?」


色々と突っ込みたいところはあるが息を切らして帰ってくると言う事はそれなりに危機に直面したからだと思うのだが,目の前の桂からはそんな様子は微塵も感じない。
一体何があったと言うんだ。すぐ答えてもらえると思ったのだが,桂は走り疲れたから夕餉の時にと自室へ戻って行った。


『相当機嫌いいみたいだな。みんなで夕餉?』


桂の言うみんなは自分を含め久坂と入江なんだろけど,いつも三津と二人きりになりたがる桂が自らそんな提案をするのが珍しすぎて不気味にも感じる。


『まぁいいか。面白い話でも聞かせてくれるんだろ。』


深く考え過ぎるのも良くないと自分を言い聞かせて吉田は夕餉の時刻を楽しみに待った。





やはり桂がみんなを誘っただけある。そもそもどんな内容であれ三津の話で退屈する事はない。


「確かに困ってる女性を助けようという気持ちは分かるよ。三津さんは本当に心優しい。」


そう言って久坂は三津を甘やかす。下手をすれば桂よりも質が悪いかもしれない。


「でもそこで自分が行く?桂さんに目配せしたんでしょ?何でそこで任せて下がらないの?」


大事な三津に何かあったらたまったもんじゃないよと吉田は呆れ返った。ご立腹じゃないだけまだいい。
ただ三津らしいと鼻で笑った。


「あーそれは桂さんが助けに入ってその女性が惚れてしまっては三津さんが穏やかじゃないですもんねぇ。分かりますよ,嫉妬故にお前はすっこんでろ女たらしってなったんですよね。んー愛が深い。」


「九一の発言はただ私を馬鹿にしてるだけだね?百歩譲って三津のそんな嫉妬心は歓迎しよう。だがお前はすっこんでろ女たらしは紛れもなく君の心の声だろ。それで愛が深いと言うお前の心情はどうなってる。」


猟奇的過ぎるだろと桂は入江を睨みつけた。
  


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「じゃあ三津と出掛けるのを諦めろよ

2024年03月06日

「じゃあ三津と出掛けるのを諦めろよ。何考えてんだよ。」


高杉はまた俺の分からん話か?と二人の顔を交互に見た。


「どうしても三津さんと出掛けたかったんだよ。それに桂さんと斎藤が何考えてるかも気になったし。
まぁ何もなかったんだからいいじゃないか。」


結果論で言うと確かに問題は無いが腑に落ちない。


「文句があるなら桂さんに言って来い。
俺は本当に文を喜ばせる物を買いたくて三津さんに協力して欲しかっただけなんだ。」


徐々に険悪な雰囲気を漂わす二人をきょろきょろ交互に見た高杉は,


「稔麿も三津さんと出掛けたいんか?そしたらふさちゃんへの贈り物二人で選んで来たらえぇやろ。」 http://kiya.blog.jp/archives/24079771.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/03/06/192105?_gl=1*vjg0h2*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://travelerbb2017.zohosites.com/


あっけらかんと言い放った。


「ふさちゃんも今年で15か?歳の離れた可愛い妹に何か贈っちゃりぃや。」


事情も分かってないのに口を出してきてまぁまぁいい案を出してくれたな。吉田はふっと笑った。


「玄瑞の言う通り文句は桂さんに言うよ。
それと癪だけど晋作の案を使わせてもらう。直談判して来ようかね。」


悪かったなと言い残して吉田は次の目的地へ。
何だか面白そうだと高杉もその後を追った。


「晋作はまた問題起こす気か。」


久坂もあえて面倒事に巻き込まれる為にその後について行った。


「桂さん失礼します。」


「そんな大勢で何事?」


文机に向かったまま上半身だけ障子の方へ向けた。
吉田の用件は想像がつくけどと苦笑い。


「何で斎藤に会わせたんです?」


「斎藤君が三津を心配してくれてたからだよ。
彼なら話して納得したらこの辺りでの徘徊を止めてくれると思ったからね。」


「私も三津と出掛けたいんですけど。」


やっぱりかと小さく息を吐いた。


「玄瑞が良くて私が駄目な理由が見当たりませんしね。」


「駄目な理由は三津を私から奪おうとしてるからで充分過ぎると思うが?」


そんな男と二人きりにさせる気はないけど?と口角を上げた。


「そしたら俺が付き添うけぇええやろ?」


高杉が目を爛々と輝かせて挙手するが,


「君は外出禁止だよ。」


桂は笑顔で却下した。


「二人きりでも問題無いですよ。私は三津にお前が抱いてと縋りつくまで手を出さないと約束したんで。」


「何だその約束は。」


高杉に向けてた笑顔は一瞬で真顔に戻った。「そのまんまですよ。私はどっかの鬼と違って無理強いは絶対しないんで。
それより私を受け入れて淫らに喜ぶ顔が見たいし。
じゃあ考えといて下さいね。ふさへの贈り物がしたいんで。」


くくっと喉を鳴らして笑うと吉田は部屋を後にした。
そのまま廊下を歩いて三津を探す。この時刻だときっと洗濯物をしているはず。


『居た。』


三人でせっせと干す作業をしているのを見つけて目元を綻ばす。


「ちゃんと女中の仕事しちょるなぁ。」


高杉は感心感心と目を細めた。


「三津さんは働き者だよ。だから桂さんにはもったいない。」


「へぇ。玄瑞もそう思うんだ。」


意外だねと横に並んだその顔を見た。久坂は吉田の言葉に少し苦笑した。


「悪いけど斎藤とお似合いだと思った。
会わせたあの時,斎藤は三津さんに向けて本当に穏やかに笑った。俺が居るのは分かってたからほんの少しだったけど。」


自分を見る吉田の目が鋭く睨みつけ,殺意にも近い感情を向けてきてるのも分かった。


「そんなに怒るなよ。その時は桂さんより斎藤の方がお似合いだと思っただけ。お前も真剣に三津さんが大事だって改めて分かったから。
俺は三津さんが幸せになるのを願ってる。それだけ。」


だから応援してるのは他の誰でもなく三津自身だ。可愛い妹だからなと笑った。


「……玄瑞もなんだかんだ三津を好きだね。」
  


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「酔った時が一番人間の本性が出ると思

2024年03月06日

「酔った時が一番人間の本性が出ると思っちょるけぇ酔わせたら三津さんがどんな人か分かると思ったそっちゃ。」


『なるほど。晋作なりの三津を知る手段と言う訳か。』


あっちに行って!と三津にぽかぽか叩かれる高杉を見ながら桂はふっと笑みを零した。


「三津さんこっちにおいで。晋作に関わるとろくな事が無い。」


久坂に手招かれた三津はすぐさまそっちへ駆け出した。


「もうやら!呑まない!」


三津は胡座を掻いた久坂の横で正座したまま突っ伏した。http://kiya.blog.jp/archives/24070176.html http://hkworld.blogg.se/2024/march/entry.html https://blog.aujourdhui.com/jennifer9922/2702546/65378---12391---65292---12393---12358---35328---12358---21213---36000---12384---65311---65379.html


「何してんの?こんなとこで寝るんじゃないよ。」


腕を引っ張り起こそうとする吉田に抵抗して三津は久坂のお腹に腕を回してしがみついた。


「やら!兄上のここがいい!」久坂に抱き着いてお腹に顔を埋めた三津を桂以外がぽかんとした顔で見た。


「玄瑞が兄上?酔って頭おかしくなった?」


吉田は側に屈んで三津の頭をぺちぺち叩いた。


「止めろ。俺からしたら三津さんは可愛い妹なんだよ。三津さんも俺を兄だと思ってくれてる。それだけだから妬くなよ。」


吉田の手を払い除けて優しく頭を撫でてやると,三津は自らのそのそと身を剥がして久坂の膝に頭を乗せて寝転がった。


「へぇー妹ね。」


払い除けられた手の甲で三津の頬を下から上に撫であげると,その手は小さな両手に掴まれた。


吉田の手のひらを自分の頬に当てて,三津は満足そうに笑って目を閉じた。
そしてそのまま動かなくなった。


「え?寝たの?三津?」


呼びかけても反応はなく,すーすーと穏やかな寝息が聞こえてくる。


「三津さんは寂しがりか。」


久坂に膝枕をさせて吉田の手も掴んで離さない様を見てそうかそうかと一人頷いた。


「失ったモノが沢山あってね。」


高杉の言葉に桂はそう答えると,仕方ないなぁと笑みを浮かべながら三津の傍に寄った。


「部屋に連れてくよ。完全に酔ってるみたいだから多分起きないよ。」


軽々と抱き上げられて広間から連れ出されるのを高杉は目を丸くして見ていた。


「三津さんここに部屋もあるん?」


「本来はずっと家に居るんだけどね,しつこい壬生狼がそこも探してて危ない時はここで匿ってる。
部屋って言っても寝るだけの場所だよ。」


「そしたら今夜は俺もそこで……。」


「お前は余計な動きしないか見張る為に俺と同室だ。」


寝言は寝て言えと吉田は高杉の頭に手刀を落とした。
今日は三津の部屋に見張りが必要だと誰もが思った。





「なぁ稔麿。三津さんは何者なん?」


吉田の横に寝転がる高杉は天井を見上げながら問いかけた。


「甘味屋の娘だよ。」


「甘味屋の娘?桂さんならもっと他に選べる程女はおるやろ?」


「本当にね。だけど三津なんだよ。俺もそこが気になって甘味屋に通った。そしたら俺も欲しくなった。」


こんな筈じゃなかったんだけどと喉を鳴らして笑った。


「お前桂さんの女に横恋慕っていい度胸やな。」


ちょっと会わないうちに面白い事になってるやん!と興奮気味にもっと話せと催促した。「長くなって面倒臭ぇって途中で止めるの無しだからな。馬鹿でも聞きやすいように話してやるから。」


「おう!聞かせろ!馬鹿は余計やけどな!」


今は大目に見てやるよと吉田の方に体を向けて話を聞く体勢を整えた。


「さっきも言ったけど甘味屋に通い出した頃はまだ桂さんの女じゃなかった。
先に惚れたのは桂さんで三津は好きになりかけてるのに気付いてなかった。」


「ほぉ。でもちったぁ気があったってか。」


「そ,だから三津が気持ちに気付く前にこっちに向かせる手はあったけど,あの政変のせいで俺が長州に帰ってる間に色々変わってた。
壬生狼の女中になってたし,それどころかそこの副長の女って不名誉な肩書きまで付いてた。」


「は?」


高杉が何か言いたそうな顔をしてるのは分かったけどそこで口を開かせたら面倒臭い。
  


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