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に行きたいぜ』
2023年12月01日
に行きたいぜ』
『君は大人しく座って学ぶようなタマじゃないからなぁ、どうだろう。……だが、夢を持つことは良い事だ。忘れるなよ、釜次郎』「──さん、桜司郎さん」
その夢は歌の声によって突如終わりを告げる。視界には自身の顔を覗き込んだ歌がいた。
「うた、さん……? 」
「気持ちよさそうに寝ていらっしゃったところを申し訳ございませぬ。粗末な物ですが、おを御用意させて頂きました」
その言葉にぼんやりとした頭が急に覚めていく。https://ameblo.jp/freelance12/entry-12830489320.html https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post502251663/ https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12243128 ぱちりと目を開けると、空を見上げた。日が暮れかかり、何処かで烏の鳴き声が聞こえる。
帰らなきゃ、と口にしようとしたところに歌が嬉しそうに目を細めた。
「私は……歌は、桜之丞兄さんに御飯を作って差し上げたかったのです。それは最早叶わぬ夢となりましたが……。こうして、そっくりな桜司郎さんに召し上がって頂けると救われます」
淡くも叶わぬ恋心が垣間見え、桜司郎は胸が締め付けられるように痛むのを感じる。出かかった言葉を飲み込み、夕餉に応じた。
向かい合うように座ると、出された膳に箸を付ける。
「美味しい……」
大根の煮付けの美味さに頬を緩ませれば、歌は笑みを浮かべた。
「そちらは桜司郎さんの御足元に転がっていった大根にございます。ええと、名付けて大根の煮付け……とか」
真剣な声色のそれに桜司郎は吹き出すように笑う。
「それって大根足のようじゃないですか」
「ああ!大根足。歌もそう言われてみたいです。白くて細くて綺麗だなんて、女子の理想ですね」
にこにこと歌は微笑んだ。ちなみに大根足とは悪口では無く、褒め言葉なのである。
楽しそうに笑う桜司郎は、幼い頃に見た桜之丞のそれと瓜二つで、まるであの日の事故は悪い夢だったのでは無いかと錯覚してしまう程だった。
──この時が永遠に続けばよろしいのに。
自身の感情に蓋をするように、首を横に振ると歌は口を開く。
「桜司郎さんは、どちらにお住まいなのですか?」
「京の西本願寺に間借りをしています。新撰組という組織はご存知ですか?そこの隊士なんです。江戸には隊士徴募の為に来ていて……」
「ええ、お噂だけ。江戸にもという似たような組織があります」
室内は夕焼けの色に染まり、歌の表情に影を作る。桜司郎の住まいが江戸ではない。それはつまりもう会うことは無いかも知れないということだ。
「……歌は、もうすぐ嫁ぎます。この数奇な出会いは、桜之丞兄さんからのお餞別ですね」
歌が嫁ぐ。それを聞いた瞬間、左胸の刻印が切なく騒いだ。今日初めて出会ったというのに、ずっと昔から見ていた妹が嫁ぐような感覚がした。
桜司郎はぎこちない笑みを浮かべる。
「それは……おめでとうございます」
「有難うございます。これで……歌は、前に進むことが出来ます」
そう言って悲しげに微笑む歌は大人の女性の顔をしていた。
やがて別れの時が来る。歌は送ると言ったが、暗くなってからの女性の一人歩きは危ないと固辞した。
歌は桜司郎の背が見えなくなるまで、ずっと頭を下げ続ける。やがて頭を下げると、その頬に一筋の雫が流れた。
それを掬うように突然風が吹く。
──うた、達者で暮らせ。
風の音か、はたまた誰かの声なのか。優しい響きに歌は微笑むと目を閉じた。 あれ程までに賑わっていた通りも、夕闇の色が濃くなるほどにを遠のかせている。京ほどではないにしても、江戸の街もそれなりに物騒だった。力に覚えが無いものは一人では歩かない方が良いと言われている。
元来た道を早足で歩きながら、桜司郎は考え事をしていた。左腰に
『君は大人しく座って学ぶようなタマじゃないからなぁ、どうだろう。……だが、夢を持つことは良い事だ。忘れるなよ、釜次郎』「──さん、桜司郎さん」
その夢は歌の声によって突如終わりを告げる。視界には自身の顔を覗き込んだ歌がいた。
「うた、さん……? 」
「気持ちよさそうに寝ていらっしゃったところを申し訳ございませぬ。粗末な物ですが、おを御用意させて頂きました」
その言葉にぼんやりとした頭が急に覚めていく。https://ameblo.jp/freelance12/entry-12830489320.html https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post502251663/ https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12243128 ぱちりと目を開けると、空を見上げた。日が暮れかかり、何処かで烏の鳴き声が聞こえる。
帰らなきゃ、と口にしようとしたところに歌が嬉しそうに目を細めた。
「私は……歌は、桜之丞兄さんに御飯を作って差し上げたかったのです。それは最早叶わぬ夢となりましたが……。こうして、そっくりな桜司郎さんに召し上がって頂けると救われます」
淡くも叶わぬ恋心が垣間見え、桜司郎は胸が締め付けられるように痛むのを感じる。出かかった言葉を飲み込み、夕餉に応じた。
向かい合うように座ると、出された膳に箸を付ける。
「美味しい……」
大根の煮付けの美味さに頬を緩ませれば、歌は笑みを浮かべた。
「そちらは桜司郎さんの御足元に転がっていった大根にございます。ええと、名付けて大根の煮付け……とか」
真剣な声色のそれに桜司郎は吹き出すように笑う。
「それって大根足のようじゃないですか」
「ああ!大根足。歌もそう言われてみたいです。白くて細くて綺麗だなんて、女子の理想ですね」
にこにこと歌は微笑んだ。ちなみに大根足とは悪口では無く、褒め言葉なのである。
楽しそうに笑う桜司郎は、幼い頃に見た桜之丞のそれと瓜二つで、まるであの日の事故は悪い夢だったのでは無いかと錯覚してしまう程だった。
──この時が永遠に続けばよろしいのに。
自身の感情に蓋をするように、首を横に振ると歌は口を開く。
「桜司郎さんは、どちらにお住まいなのですか?」
「京の西本願寺に間借りをしています。新撰組という組織はご存知ですか?そこの隊士なんです。江戸には隊士徴募の為に来ていて……」
「ええ、お噂だけ。江戸にもという似たような組織があります」
室内は夕焼けの色に染まり、歌の表情に影を作る。桜司郎の住まいが江戸ではない。それはつまりもう会うことは無いかも知れないということだ。
「……歌は、もうすぐ嫁ぎます。この数奇な出会いは、桜之丞兄さんからのお餞別ですね」
歌が嫁ぐ。それを聞いた瞬間、左胸の刻印が切なく騒いだ。今日初めて出会ったというのに、ずっと昔から見ていた妹が嫁ぐような感覚がした。
桜司郎はぎこちない笑みを浮かべる。
「それは……おめでとうございます」
「有難うございます。これで……歌は、前に進むことが出来ます」
そう言って悲しげに微笑む歌は大人の女性の顔をしていた。
やがて別れの時が来る。歌は送ると言ったが、暗くなってからの女性の一人歩きは危ないと固辞した。
歌は桜司郎の背が見えなくなるまで、ずっと頭を下げ続ける。やがて頭を下げると、その頬に一筋の雫が流れた。
それを掬うように突然風が吹く。
──うた、達者で暮らせ。
風の音か、はたまた誰かの声なのか。優しい響きに歌は微笑むと目を閉じた。 あれ程までに賑わっていた通りも、夕闇の色が濃くなるほどにを遠のかせている。京ほどではないにしても、江戸の街もそれなりに物騒だった。力に覚えが無いものは一人では歩かない方が良いと言われている。
元来た道を早足で歩きながら、桜司郎は考え事をしていた。左腰に
Posted by AmandaMonroe at 17:36│Comments(0)