My Magic Dairy
突然頬に触れられて三津の体は大きく跳ね
2024年05月10日
突然頬に触れられて三津の体は大きく跳ねた。その反応に桂は慌てて手を引き,さらに両手を上げた。何もしないの合図だ。
「すまん!怖がらせる気はなくてっ!顔が赤いように見えたから熱でも出てるのかと……。心身共に疲労が溜まってるだろうし……。」
しゅんとした桂を見て三津もしゅんと眉尻を下げた。心苦しくて何も言えない。
『小太郎さんとの事でこうなってるやなんて心配してくれてるこの人には口が裂けても言えん……。』
目を伏せて黙り込んでしまった三津を前に,桂も言葉が何も出て来ない。https://johnn.blog-mmo.com/Entry/5/ https://edward.ni-3.net/Entry/5/ https://anosmic.animegoe.com/Entry/5/
『今のは単に驚いただけだろうか……。それとも私に触れられたのが嫌だった拒絶反応か?』
三津の様子を窺っているとふいに目が合った。それだけなのに,にやけそうになった顔を引き締めた。
「あの……両手下げてもらって大丈夫です。怖かったんやなくてびっくりしただけで……。
あと熱も無いと思います。疲れてますけど体調悪いとかそんな感じではないんで……。」
心配かけてすみませんと頭を下げた。
「それなら良かった。だが少しでも疲れをとる為にも小太郎を待たず寝ていいよ。」
桂は先に布団に入るように促した。すると三津は顔を上げて首を左に傾けた。
「準一郎さんは癒やしはいりませんか?」
“要る!”
と即答したいところを我慢して軽く咳払いをした。
「さっきの小太郎の慰めてやれを気にしてるのかい?それなら大丈夫だよ。本気の喧嘩をしたんでもないし傷心でもない。」
桂は大丈夫大丈夫と笑った。
本当は膝枕をして欲しい。胸に顔を埋めて癒やされたい。
「君は?癒やしはいらない?」
『まずい……。いらん事を言った……。』
桂は笑顔のまま心の中で激しく後悔した。余計なことを口走ってしまった。笑っているが内心では全く笑えない。
『小太郎の方が松子にとってはさぞ癒やしだろう……。』
自分で自分の首を絞めたなと自虐的になっていると,
「……少しだけ。」
にじり寄って来た三津が胸板に顔を埋めた。腕が背中に回され抱きつかれた。
『えっ?今何が起こってる?松子が私に甘えてるのか?癒やしを求められた?えっ?えっ?』
桂が混乱を極めていると三津の体がぱっと離れた。呆然としていたら少し照れ臭そうにはにかんだ笑顔が見上げてくる。
「ありがとうございました。元気出ました。明日の為にも先に寝ますね。おやすみなさい。」
三津はそそくさと布団に潜り込んで頭から掛け布団を被った。
『急に擦り寄られても……。私の方も元気が出てしまったじゃないか……。』『歩み寄ろうとしてくれてるのか,気を遣われてるだけなのか分からん……。』
どちらにせよ今までの経験から言えるのは,三津に期待してはならない。
頭からすっぽり布団を被ってしまわれてはどんな表情をし,何を考えてるのか知る事が出来ない。
『流石にまだ起きてるよな。さっき横になったばかりだし。
そう言えば松子は寝相がいいな。蹴られた記憶もないし布団を掛け直してやった事もない。
いつだったか玄瑞も生きてるか心配と言ってたな。』
そんな事を思い出して笑みを浮かべて三津を眺めているところへ入江が戻って来た。
「……にやにやして気持ち悪い。」
「戻って来て第一声がそれとは喧嘩を売られてると取っても問題なかろう。」
桂は真剣勝負だと大刀に手をした。それは勘弁と入江は自分の寝床に腰を下ろし,布団に包まって塊と化した三津を見た。
「夫婦の会話しました?」
「した。珍しく甘えて来た。」
「へぇ~。」
入江はまるで興味はなく,三津が寝てるのかだけが気になった。桂はちょっとぐらい嫉妬したらどうだとムッとした。
「寝てるんですか?」
「さぁ?だが起きていたらお前におかえりと声を掛けるだろ。」
「そうですね。じゃあ寝ちょるんか。」
「お前のその揺るぎない自信が羨ましいわ。」
「すまん!怖がらせる気はなくてっ!顔が赤いように見えたから熱でも出てるのかと……。心身共に疲労が溜まってるだろうし……。」
しゅんとした桂を見て三津もしゅんと眉尻を下げた。心苦しくて何も言えない。
『小太郎さんとの事でこうなってるやなんて心配してくれてるこの人には口が裂けても言えん……。』
目を伏せて黙り込んでしまった三津を前に,桂も言葉が何も出て来ない。https://johnn.blog-mmo.com/Entry/5/ https://edward.ni-3.net/Entry/5/ https://anosmic.animegoe.com/Entry/5/
『今のは単に驚いただけだろうか……。それとも私に触れられたのが嫌だった拒絶反応か?』
三津の様子を窺っているとふいに目が合った。それだけなのに,にやけそうになった顔を引き締めた。
「あの……両手下げてもらって大丈夫です。怖かったんやなくてびっくりしただけで……。
あと熱も無いと思います。疲れてますけど体調悪いとかそんな感じではないんで……。」
心配かけてすみませんと頭を下げた。
「それなら良かった。だが少しでも疲れをとる為にも小太郎を待たず寝ていいよ。」
桂は先に布団に入るように促した。すると三津は顔を上げて首を左に傾けた。
「準一郎さんは癒やしはいりませんか?」
“要る!”
と即答したいところを我慢して軽く咳払いをした。
「さっきの小太郎の慰めてやれを気にしてるのかい?それなら大丈夫だよ。本気の喧嘩をしたんでもないし傷心でもない。」
桂は大丈夫大丈夫と笑った。
本当は膝枕をして欲しい。胸に顔を埋めて癒やされたい。
「君は?癒やしはいらない?」
『まずい……。いらん事を言った……。』
桂は笑顔のまま心の中で激しく後悔した。余計なことを口走ってしまった。笑っているが内心では全く笑えない。
『小太郎の方が松子にとってはさぞ癒やしだろう……。』
自分で自分の首を絞めたなと自虐的になっていると,
「……少しだけ。」
にじり寄って来た三津が胸板に顔を埋めた。腕が背中に回され抱きつかれた。
『えっ?今何が起こってる?松子が私に甘えてるのか?癒やしを求められた?えっ?えっ?』
桂が混乱を極めていると三津の体がぱっと離れた。呆然としていたら少し照れ臭そうにはにかんだ笑顔が見上げてくる。
「ありがとうございました。元気出ました。明日の為にも先に寝ますね。おやすみなさい。」
三津はそそくさと布団に潜り込んで頭から掛け布団を被った。
『急に擦り寄られても……。私の方も元気が出てしまったじゃないか……。』『歩み寄ろうとしてくれてるのか,気を遣われてるだけなのか分からん……。』
どちらにせよ今までの経験から言えるのは,三津に期待してはならない。
頭からすっぽり布団を被ってしまわれてはどんな表情をし,何を考えてるのか知る事が出来ない。
『流石にまだ起きてるよな。さっき横になったばかりだし。
そう言えば松子は寝相がいいな。蹴られた記憶もないし布団を掛け直してやった事もない。
いつだったか玄瑞も生きてるか心配と言ってたな。』
そんな事を思い出して笑みを浮かべて三津を眺めているところへ入江が戻って来た。
「……にやにやして気持ち悪い。」
「戻って来て第一声がそれとは喧嘩を売られてると取っても問題なかろう。」
桂は真剣勝負だと大刀に手をした。それは勘弁と入江は自分の寝床に腰を下ろし,布団に包まって塊と化した三津を見た。
「夫婦の会話しました?」
「した。珍しく甘えて来た。」
「へぇ~。」
入江はまるで興味はなく,三津が寝てるのかだけが気になった。桂はちょっとぐらい嫉妬したらどうだとムッとした。
「寝てるんですか?」
「さぁ?だが起きていたらお前におかえりと声を掛けるだろ。」
「そうですね。じゃあ寝ちょるんか。」
「お前のその揺るぎない自信が羨ましいわ。」
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03:36
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雑木林の奥を真っ直ぐ見つめながら
2024年05月10日
雑木林の奥を真っ直ぐ見つめながら三津は何が一番いけなかったのかを考えた。
「えー……私は京に戻ったら二人が会う時間なくなるけぇ今日ぐらいは一緒に寝りってあの人には言ったんやけど……。
捻くれて甘い時間過ごさんかったんかい……。」
『木戸さんは木戸さんできっと松子の為を考えての事なんやろけど,木戸さんのやる事って色恋沙汰に関しては大体的外れなんよなぁ……。』
入江と三津は二人でうーんと唸った。
「もし怒らせたんやとしたら,小太郎さんの方が私と意思疎通出来てるって言うから共にする時間が長いなら仕方ないし,一蓮托生って言ったのあなたでしょって言っちゃった事かなぁ……。」 https://johnn.3rin.net/Entry/6/ https://paul.animech.net/Entry/5/ https://paul.anime-cosplay.com/Entry/5/
「確信突かれて怒っとるようじゃいよいよ駄目な男やで。
多分何か考えとるんやとは思うけど私らには解り兼ねる。ひとまず今日は様子見よ。」
今日から三人一部屋なのにこの状態は気まずい。二人からすれば,宿に着くまでにどうにか桂の本心に近付きたいところだ。
そこへ茂みを掻き分け桂が戻って来た。
「おかえりなさい。」
「待たせてすまない。行こうか。」
三津が声を掛けたのに,桂は笠を深く被り直し顔を見る事なくまた前を歩き出した。
入江と三津は苦笑いで顔を見合わせ,間隔を保ちながら歩き出した。
今日の道は足場が悪い。大きい石が飛び出していたり窪んでいたり。慎重に歩いていたが,
「あっ。」
でこぼこした地面に三津は足を取られて体勢を崩した。三津の足音に瞬時に反応した桂は咄嗟に振り向いて腕を掴み,何とか転倒を免れた。
「大丈夫かい?」
「はい,ありがとうございます。」
三津は体勢を整えてぺこりと頭を下げた。桂はその姿を視界に入れず,入江へと視線を向けた。
「小太郎,もう少し松子の傍を歩いてくれ。前を向いてる私では反応が遅れる。」
「承知しました。」
『充分反応出来てる癖に。』
入江は頭を下げながらそう思った。
頭を上げた時には桂はもう歩き始めていた。三津がその姿を見てぽかんと立ち尽くしている。
「今は歩くのに集中して気にせんとき。」
入江は三津の耳元で囁いてそっと背中を押した。三津も無言で頷いて足を動かした。
途中,腰を掛けるのにちょうどいい岩があった所で休憩を取った。
「近くに沢がある。水を汲んでくる。」
そう言って桂は一人その場を離れた。
「何か……私と小太郎さんを二人にさせたいみたいですね。京に着くまでの間に私らが二人で居る事に慣れようとしてるんですかね?」
「分からん。」
『どう言うつもりか聞きたいが素直には話さんやろうな。』
「小太郎さんでも分からんのやったらお手上げです。
口数減らすって言わはったし道中は私らと喋る気ないって事ですよね。」
三津は参ったなと戯けて笑うが本当にどうしたらいいか分からない。
ははっと乾いた笑いの後に小さな溜息をついて目を伏せた。
「松子のせいやない。私と木戸さんで勝手に起こした面倒事や。私らで解決する。その間は居辛いやろうが必ず何とかする。」
入江は俯いてしまった三津の頬にそっと手を当てた。こんな表情をさせたい訳じゃない。
「あえて話しかけたらどんな反応をすると思います?」
「そうやなぁ……。」
『一言二言の短くて当たり障りない返事で済ますやろな。それを冷たく感じて松子が落ち込むだけな気がする……。』
「松子,ここは木戸さんの気が紛れるまで好きにさせた方がえぇと思う。気が済んだら直に収まる。」
「そっかぁ……。そっとしといてくれって事ですかね。」
それなら仕方ないやと三津は困った顔で笑った。
「すまん……。そんな顔させてもて……。」
入江は両手で三津の顔を包み込んだ。三津は頬に添えられた手に自分の手を重ねた。
「大丈夫です。」
三津はにっと笑ってみせた。入江は頬をぺちぺちと叩いて無理はしないでとだけお願いした。
程なくして桂が竹筒に水を汲んで戻って来た。
今回は道が険しいから疲れたらすぐに申告する事とだけ三津に忠告し,またすぐに歩き始めた。
「えー……私は京に戻ったら二人が会う時間なくなるけぇ今日ぐらいは一緒に寝りってあの人には言ったんやけど……。
捻くれて甘い時間過ごさんかったんかい……。」
『木戸さんは木戸さんできっと松子の為を考えての事なんやろけど,木戸さんのやる事って色恋沙汰に関しては大体的外れなんよなぁ……。』
入江と三津は二人でうーんと唸った。
「もし怒らせたんやとしたら,小太郎さんの方が私と意思疎通出来てるって言うから共にする時間が長いなら仕方ないし,一蓮托生って言ったのあなたでしょって言っちゃった事かなぁ……。」 https://johnn.3rin.net/Entry/6/ https://paul.animech.net/Entry/5/ https://paul.anime-cosplay.com/Entry/5/
「確信突かれて怒っとるようじゃいよいよ駄目な男やで。
多分何か考えとるんやとは思うけど私らには解り兼ねる。ひとまず今日は様子見よ。」
今日から三人一部屋なのにこの状態は気まずい。二人からすれば,宿に着くまでにどうにか桂の本心に近付きたいところだ。
そこへ茂みを掻き分け桂が戻って来た。
「おかえりなさい。」
「待たせてすまない。行こうか。」
三津が声を掛けたのに,桂は笠を深く被り直し顔を見る事なくまた前を歩き出した。
入江と三津は苦笑いで顔を見合わせ,間隔を保ちながら歩き出した。
今日の道は足場が悪い。大きい石が飛び出していたり窪んでいたり。慎重に歩いていたが,
「あっ。」
でこぼこした地面に三津は足を取られて体勢を崩した。三津の足音に瞬時に反応した桂は咄嗟に振り向いて腕を掴み,何とか転倒を免れた。
「大丈夫かい?」
「はい,ありがとうございます。」
三津は体勢を整えてぺこりと頭を下げた。桂はその姿を視界に入れず,入江へと視線を向けた。
「小太郎,もう少し松子の傍を歩いてくれ。前を向いてる私では反応が遅れる。」
「承知しました。」
『充分反応出来てる癖に。』
入江は頭を下げながらそう思った。
頭を上げた時には桂はもう歩き始めていた。三津がその姿を見てぽかんと立ち尽くしている。
「今は歩くのに集中して気にせんとき。」
入江は三津の耳元で囁いてそっと背中を押した。三津も無言で頷いて足を動かした。
途中,腰を掛けるのにちょうどいい岩があった所で休憩を取った。
「近くに沢がある。水を汲んでくる。」
そう言って桂は一人その場を離れた。
「何か……私と小太郎さんを二人にさせたいみたいですね。京に着くまでの間に私らが二人で居る事に慣れようとしてるんですかね?」
「分からん。」
『どう言うつもりか聞きたいが素直には話さんやろうな。』
「小太郎さんでも分からんのやったらお手上げです。
口数減らすって言わはったし道中は私らと喋る気ないって事ですよね。」
三津は参ったなと戯けて笑うが本当にどうしたらいいか分からない。
ははっと乾いた笑いの後に小さな溜息をついて目を伏せた。
「松子のせいやない。私と木戸さんで勝手に起こした面倒事や。私らで解決する。その間は居辛いやろうが必ず何とかする。」
入江は俯いてしまった三津の頬にそっと手を当てた。こんな表情をさせたい訳じゃない。
「あえて話しかけたらどんな反応をすると思います?」
「そうやなぁ……。」
『一言二言の短くて当たり障りない返事で済ますやろな。それを冷たく感じて松子が落ち込むだけな気がする……。』
「松子,ここは木戸さんの気が紛れるまで好きにさせた方がえぇと思う。気が済んだら直に収まる。」
「そっかぁ……。そっとしといてくれって事ですかね。」
それなら仕方ないやと三津は困った顔で笑った。
「すまん……。そんな顔させてもて……。」
入江は両手で三津の顔を包み込んだ。三津は頬に添えられた手に自分の手を重ねた。
「大丈夫です。」
三津はにっと笑ってみせた。入江は頬をぺちぺちと叩いて無理はしないでとだけお願いした。
程なくして桂が竹筒に水を汲んで戻って来た。
今回は道が険しいから疲れたらすぐに申告する事とだけ三津に忠告し,またすぐに歩き始めた。
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三津は突然挙動不審になった桂と
2024年05月09日
三津は突然挙動不審になった桂と,満面の笑みの入江を交互に見た。
「九一さん何したの。」
「それは男同士の秘密や。」
『悪い顔して笑って……。』
また何か悪巧みしてるなと三津は入江を半目で見た。あれは良からぬ事を考えてる顔だ。
『でも小五郎さん揶揄って遊ぶ余裕はまだあるのね。』 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/05/05/200401?_gl=1*7trflq*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12851052165.html https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post505064158//
そこは三津にとってほっとする部分だった。
ちらっと山縣の方を見れば,他の隊士に鍛錬は怠るなと朝から説教じみた話をしている。こちらもちゃんと先を見据えて高杉の役目をしっかり担おうとしている。
『山縣さんも責任感強くて真面目。』
昨日吐き出したのはほんの一部に過ぎないだろうけど,それでも山縣の心が軽くなっているのなら三津にとっては嬉しい事だ。
三津は時間を作っては高杉の元へ通った。
「三津さんが俺の為にこんなに尽くしてくれるんやったらもっと早よ病にかかりゃ良かったな。」
そう言って笑う高杉の頬を三津はきゅっと摘んだ。そんな力じゃ痛くないわとケラケラ笑う高杉に呆れた笑みを浮かべた。
「高杉さん,私に出来る事ありますか?」
三津の言葉に今度は高杉が呆れた笑みを浮かべた。
「三津さん,来るたびそう言うがもう事足りとる。おうのもずっとおってくれる。」
毎度このやり取りをやる。高杉がそう言うと三津は必ず腑に落ちないと顔で表す。
「そうやなぁ……。三津さんに出来る事……。強いて言うなら……もっと自分を生きて欲しい。」
目を丸くして小首を傾げる三津に高杉は穏やかな目を向けた。
「三津さんは自分の事が好きになれん,自信が持てんと言っとったな。それはそれで構わんと思う。ただ,自分を好きになれんし自信が持てん自分を,それも自分やと認めてやって欲しい。」
「それが私が私を生きる事なんですか?」
高杉の言わんとする事が分からなくて,きょとんとしつつ問いかける三津に高杉は大きく頷いた。
「まず一歩や。
三津さんはずっと木戸さんや俺や九一やみんなの弱いとこ駄目なとこを認めて受け入れてくれたが,何で自分にそれをせん?
俺らはそうしてもらえて嬉しかった。だったら三津さんの心もそうしてもらえりゃ嬉しいやろ?
もっと自分で自分を褒めちゃりぃや。」
「それが……私が出来る事で……高杉さんが私にして欲しい事?」
高杉は静かに頷いた。
「別に自分を変えろって言いたいんやない。逆や。そのまんまでいい。そのまんまの自分を否定さえせんかったらいい。
本心を否定するな。心のままに,自分の心に従って生きて欲しい。ただそれだけや。」言葉が出ず,呆然としてしまった三津に高杉はどうすれば伝わるかと首をひねった。
「俺はあんま例え話とか上手く出来ん。」
「色んな意味で真っ直ぐですもんね。」
「なぁそれ悪口か?」
高杉はムッと眉間に皺を寄せ,三津は褒めてますと笑った。
「いつもの高杉さんの単刀直入な言葉をくださいよ。」
ズバッと切り込んでくれと笑って強請った。
「それで言うなら三津さんが俺に俺自身と向き合わせてくれたみたいに,三津さんも三津さん自身ともっと本音で語り合え。
もっと自分に自分の本音を聞いてみ。それで自分はどうしたいか考えて,自分はこうしたいと望んで,自分に従って生きろって事や。
周りがどう思うとかは気にしちゃいけん。自分に集中しろ。」
「そう言われたらそうですね。人に対して出来る事を何で自分にはしてあげられへんのやろ?」
三津は不思議とくすくす笑った。人の良い部分はすぐ見つけて褒めてあげられるのに自分を褒めろと言われたらどこをどう褒めていいか分からない。
「やけんそれだけ自分を後回しにしちょるって事やろ。悪く言えば蔑ろにしとる。
それに三津さんには木戸さんも九一もおって支えにはなるやろうが同時に振り回されたりもする。
その時にしっかり自分を生きてられたら,振り回されんと三津さんの意思で立ってられると思う。
俺がおらんくなって三津さんに関して心配なんはそこなんよ。」
「九一さん何したの。」
「それは男同士の秘密や。」
『悪い顔して笑って……。』
また何か悪巧みしてるなと三津は入江を半目で見た。あれは良からぬ事を考えてる顔だ。
『でも小五郎さん揶揄って遊ぶ余裕はまだあるのね。』 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/05/05/200401?_gl=1*7trflq*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12851052165.html https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post505064158//
そこは三津にとってほっとする部分だった。
ちらっと山縣の方を見れば,他の隊士に鍛錬は怠るなと朝から説教じみた話をしている。こちらもちゃんと先を見据えて高杉の役目をしっかり担おうとしている。
『山縣さんも責任感強くて真面目。』
昨日吐き出したのはほんの一部に過ぎないだろうけど,それでも山縣の心が軽くなっているのなら三津にとっては嬉しい事だ。
三津は時間を作っては高杉の元へ通った。
「三津さんが俺の為にこんなに尽くしてくれるんやったらもっと早よ病にかかりゃ良かったな。」
そう言って笑う高杉の頬を三津はきゅっと摘んだ。そんな力じゃ痛くないわとケラケラ笑う高杉に呆れた笑みを浮かべた。
「高杉さん,私に出来る事ありますか?」
三津の言葉に今度は高杉が呆れた笑みを浮かべた。
「三津さん,来るたびそう言うがもう事足りとる。おうのもずっとおってくれる。」
毎度このやり取りをやる。高杉がそう言うと三津は必ず腑に落ちないと顔で表す。
「そうやなぁ……。三津さんに出来る事……。強いて言うなら……もっと自分を生きて欲しい。」
目を丸くして小首を傾げる三津に高杉は穏やかな目を向けた。
「三津さんは自分の事が好きになれん,自信が持てんと言っとったな。それはそれで構わんと思う。ただ,自分を好きになれんし自信が持てん自分を,それも自分やと認めてやって欲しい。」
「それが私が私を生きる事なんですか?」
高杉の言わんとする事が分からなくて,きょとんとしつつ問いかける三津に高杉は大きく頷いた。
「まず一歩や。
三津さんはずっと木戸さんや俺や九一やみんなの弱いとこ駄目なとこを認めて受け入れてくれたが,何で自分にそれをせん?
俺らはそうしてもらえて嬉しかった。だったら三津さんの心もそうしてもらえりゃ嬉しいやろ?
もっと自分で自分を褒めちゃりぃや。」
「それが……私が出来る事で……高杉さんが私にして欲しい事?」
高杉は静かに頷いた。
「別に自分を変えろって言いたいんやない。逆や。そのまんまでいい。そのまんまの自分を否定さえせんかったらいい。
本心を否定するな。心のままに,自分の心に従って生きて欲しい。ただそれだけや。」言葉が出ず,呆然としてしまった三津に高杉はどうすれば伝わるかと首をひねった。
「俺はあんま例え話とか上手く出来ん。」
「色んな意味で真っ直ぐですもんね。」
「なぁそれ悪口か?」
高杉はムッと眉間に皺を寄せ,三津は褒めてますと笑った。
「いつもの高杉さんの単刀直入な言葉をくださいよ。」
ズバッと切り込んでくれと笑って強請った。
「それで言うなら三津さんが俺に俺自身と向き合わせてくれたみたいに,三津さんも三津さん自身ともっと本音で語り合え。
もっと自分に自分の本音を聞いてみ。それで自分はどうしたいか考えて,自分はこうしたいと望んで,自分に従って生きろって事や。
周りがどう思うとかは気にしちゃいけん。自分に集中しろ。」
「そう言われたらそうですね。人に対して出来る事を何で自分にはしてあげられへんのやろ?」
三津は不思議とくすくす笑った。人の良い部分はすぐ見つけて褒めてあげられるのに自分を褒めろと言われたらどこをどう褒めていいか分からない。
「やけんそれだけ自分を後回しにしちょるって事やろ。悪く言えば蔑ろにしとる。
それに三津さんには木戸さんも九一もおって支えにはなるやろうが同時に振り回されたりもする。
その時にしっかり自分を生きてられたら,振り回されんと三津さんの意思で立ってられると思う。
俺がおらんくなって三津さんに関して心配なんはそこなんよ。」
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「そんなもの要らん!私は三津しか要らない!!」
2024年05月05日
「そんなもの要らん!私は三津しか要らない!!」
「ごっごめんなさいっ……。」
三津の怯えた声に桂は冷静さを取り戻した。
「すまん!ついカッとなった……。三津は私を気遣って言ってくれただけだよね?でも私は大丈夫だ。他に安らぐ場所など必要ない。君が妻で居てくれるんだ。怒鳴ってごめんね。」
桂は三津の頭を頬をすり寄せて耳元で優しく囁いた。でも三津はごめんなさいともう一度謝ったきり黙り込んでしまった。
このまま屯所には戻れない。桂は少し散歩をしようと静かな川辺りを目指した。
「悪い気分は水に流して帰ろう。」
桂は京にいた頃のように三津を川へ連れて来た。その気遣いに三津はやんわり微笑んだ。
やはり三津を目の前にすると自制心と言うものが機能しなくなる。桂は三津を抱きしめて,それから激しく唇を奪った。
舌で口内を犯されて三津は頬を紅くして桂を見上げた。
「久しぶに見たな。その物欲しそうな顔。」 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/05/04/011928?_gl=1*klv1e1*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://travelerbb2017.zohosites.com/ http://kiya.blog.jp/archives/24628252.html
「そんな顔してへん……。」
口を尖らせぷいっとそっぽを向く三津の顎を掴んで更に口づけを与えた。不器用に舌を絡めて応える様に桂の表情は緩んだ。
『全然変わってない。』
やり慣れてないのが伝わって言い知れぬ安心感が桂の理性を取っ払った。伸びた手は大胆に脚を撫で上げ,三津はひゃっ!と小さく悲鳴を上げた。「小五郎さんっ!外っ!ここ外っ!」
「無理,もう我慢出来ない……。」
桂の艶っぽい声を久しぶりに聞いた。そんな声を耳元で聞かされ,吐息までかけられたら三津の頭の中は真っ白だ。
「駄目,我慢して。外はやだ。」
「中ならいい?」
コツンと額をぶつけられ,甘えた顔で懇願する桂を三津は直視出来ない。
『あぁ……この感じ……懐かしい……。』
顔を赤らめて恥じらいながら身動きの取れなくなる三津にずっと押し殺してきた感情が湧き上がる。
「これ以上焦らさないで。こんなとこ誰も来ないよ。」
追い打ちをかけるように耳元で囁やいて反論出来ないように口づけで口を塞いだ。何度も貪れば三津は立っていられない。そうなってから二人は茂みに紛れ込んだ。
「ごめんね?そんな怒らないで?」
桂は不貞腐れた顔で乱れた着物を整える三津の髪を指で梳いた。
「別に怒ってないです。ただ……久しぶりなんがこれやから……恥ずかし過ぎて……。」
自分でも訳が分からないぐらいに気分が昂ぶったのが,今になって死にたいぐらい恥ずかしい。
「初めて肌を合わせた時もそんな顔しながら着物着てたね。」
あの時は見ないでと怒られたんだと懐かしさに目を細めた。
「あの時も恥ずかしかったから……。」
そう言って,もぉ見ないで!とそっぽを向く仕草もあの時と変わらない。それがまた堪らなく愛おしくて桂のにやにやは止まらない。
「三津が変わってなくて安心した。」
口は悪くなったがやっぱり中身は三津のままだ。食べてしまいたいぐらい可愛いんだよとにやけた顔で言うと,三津は物凄く嫌そうな顔で口をへの字に曲げた。
それからまた馬に跨りのんびり屯所を目指した。
久しぶりの二人の時間を満喫した。
二人が戻った時には昼はとうに過ぎていた。屯所のみんなは腹を満たして各々寛いでる所だった。
「お帰り,こっぴどくやられたー?」
高杉や山縣は桂をからかう為に帰宅を待ち望んでいた。入江と伊藤はお昼をお食べと三津の世話を焼いた。
「着いてすぐ四半刻ほど叱られたよ。」
そう言う割に機嫌がいい。高杉と山縣は首を捻った。
「あっそう言えばお詫びはしたけどお礼何もせずに帰って来ましたよね?」
説教を受けて,元周の“帰って良し”に素直に従って帰って来てしまった。
「あー。そりゃまた呼びつけられるわ。多分元周様わざと帰したんやろ。ありゃあ何かにつけて三津さん呼び出す気やな。」
高杉は,こっちは女将から解放されたが三津が元周に解放されるのは当分先やなと笑った。
「ごっごめんなさいっ……。」
三津の怯えた声に桂は冷静さを取り戻した。
「すまん!ついカッとなった……。三津は私を気遣って言ってくれただけだよね?でも私は大丈夫だ。他に安らぐ場所など必要ない。君が妻で居てくれるんだ。怒鳴ってごめんね。」
桂は三津の頭を頬をすり寄せて耳元で優しく囁いた。でも三津はごめんなさいともう一度謝ったきり黙り込んでしまった。
このまま屯所には戻れない。桂は少し散歩をしようと静かな川辺りを目指した。
「悪い気分は水に流して帰ろう。」
桂は京にいた頃のように三津を川へ連れて来た。その気遣いに三津はやんわり微笑んだ。
やはり三津を目の前にすると自制心と言うものが機能しなくなる。桂は三津を抱きしめて,それから激しく唇を奪った。
舌で口内を犯されて三津は頬を紅くして桂を見上げた。
「久しぶに見たな。その物欲しそうな顔。」 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/05/04/011928?_gl=1*klv1e1*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://travelerbb2017.zohosites.com/ http://kiya.blog.jp/archives/24628252.html
「そんな顔してへん……。」
口を尖らせぷいっとそっぽを向く三津の顎を掴んで更に口づけを与えた。不器用に舌を絡めて応える様に桂の表情は緩んだ。
『全然変わってない。』
やり慣れてないのが伝わって言い知れぬ安心感が桂の理性を取っ払った。伸びた手は大胆に脚を撫で上げ,三津はひゃっ!と小さく悲鳴を上げた。「小五郎さんっ!外っ!ここ外っ!」
「無理,もう我慢出来ない……。」
桂の艶っぽい声を久しぶりに聞いた。そんな声を耳元で聞かされ,吐息までかけられたら三津の頭の中は真っ白だ。
「駄目,我慢して。外はやだ。」
「中ならいい?」
コツンと額をぶつけられ,甘えた顔で懇願する桂を三津は直視出来ない。
『あぁ……この感じ……懐かしい……。』
顔を赤らめて恥じらいながら身動きの取れなくなる三津にずっと押し殺してきた感情が湧き上がる。
「これ以上焦らさないで。こんなとこ誰も来ないよ。」
追い打ちをかけるように耳元で囁やいて反論出来ないように口づけで口を塞いだ。何度も貪れば三津は立っていられない。そうなってから二人は茂みに紛れ込んだ。
「ごめんね?そんな怒らないで?」
桂は不貞腐れた顔で乱れた着物を整える三津の髪を指で梳いた。
「別に怒ってないです。ただ……久しぶりなんがこれやから……恥ずかし過ぎて……。」
自分でも訳が分からないぐらいに気分が昂ぶったのが,今になって死にたいぐらい恥ずかしい。
「初めて肌を合わせた時もそんな顔しながら着物着てたね。」
あの時は見ないでと怒られたんだと懐かしさに目を細めた。
「あの時も恥ずかしかったから……。」
そう言って,もぉ見ないで!とそっぽを向く仕草もあの時と変わらない。それがまた堪らなく愛おしくて桂のにやにやは止まらない。
「三津が変わってなくて安心した。」
口は悪くなったがやっぱり中身は三津のままだ。食べてしまいたいぐらい可愛いんだよとにやけた顔で言うと,三津は物凄く嫌そうな顔で口をへの字に曲げた。
それからまた馬に跨りのんびり屯所を目指した。
久しぶりの二人の時間を満喫した。
二人が戻った時には昼はとうに過ぎていた。屯所のみんなは腹を満たして各々寛いでる所だった。
「お帰り,こっぴどくやられたー?」
高杉や山縣は桂をからかう為に帰宅を待ち望んでいた。入江と伊藤はお昼をお食べと三津の世話を焼いた。
「着いてすぐ四半刻ほど叱られたよ。」
そう言う割に機嫌がいい。高杉と山縣は首を捻った。
「あっそう言えばお詫びはしたけどお礼何もせずに帰って来ましたよね?」
説教を受けて,元周の“帰って良し”に素直に従って帰って来てしまった。
「あー。そりゃまた呼びつけられるわ。多分元周様わざと帰したんやろ。ありゃあ何かにつけて三津さん呼び出す気やな。」
高杉は,こっちは女将から解放されたが三津が元周に解放されるのは当分先やなと笑った。
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01:43
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「三津さんは急須じゃ。
2024年04月12日
「三津さんは急須じゃ。桂さんは三津さんに温かいお茶を注いでくれ注いでくれとねだる湯呑み。
三津さんがおらんと空っぽで湯呑みの役割すら果たせん。」
「役立たずですね。」
「辛辣やのぉ。」
中岡はまぁ待てと話を続けた。
「じゃけん桂さんを使える湯呑みに出来るのは三津さんだけや。」
「幾松さんだって注いでくれますよ。」
「あの人は徳利じゃ。湯呑みは酒を注いで欲しくない。」 https://mathewanderson.animech.net/Entry/3/ https://anderson.cosplay-navi.com/Entry/5/ https://carinaa.blog-mmo.com/Entry/3/
三津はうーんと唸った。中岡の喩えが分かるような分からないような。
徳利の中身を入れ替えたらいいとか,湯呑みからお猪口に成り変わればいいとか屁理屈ばかり浮かんでくる。
「そんなに寄りを戻したくないんか?」
だからそんなに否定的なのか?と中岡は三津に詰め寄った。喩えが三津に伝わらなかったのが悔しいのか必死だった。
「あー……そうなのかもしれません。」
「それは入江君がおるからか?」
「いやぁ……九一さん居なくても寄りを戻すかは……。居なきゃ居ないで文さん達と女同士でわいわいしてるのが楽しいですし。」
「とうとう男は必要とされんくなるのか……。」
それは辛いとしょんぼりしたので,私がそう思うだけだと言っておいた。中岡が気に病む事ではない。
「三津さん今の暮らしが気に入っとるん?」
「はい。楽しいです。気が楽です。自分の事だけに集中出来ますから。」
中岡は目を細めてそうかと呟き,それ以後桂の話は出さなかった。
「あー帰って来たぁ……。」
萩の匂いだと空気を肺いっぱいに吸い込んだ。どんな匂いかは喩え難いが京とは全く違う澄んだ空気だ。
「いやぁお疲れやったな!」
中岡はちょっとした楽しい旅行だったと言わんばかりの笑顔で三津の頭を撫で回した。
いつも思うが赤禰にしろ中岡にしろ,何故そんなに犬を扱うように触るのか。
「中岡さんは今日はこちらに泊まっていかはるの?」
「いや,これから坂本と落ち合うけんこのまま次に行く。」
「え!?このまま!?」
ちょっとぐらい休めばいいのにと言ってみたが,中岡はいつもの事だとにっと笑った。
「ホンマに助かった!ありがとう!」
「いえいえ,中岡さんこそお疲れ様ですよ。」
自分を京に連れて来いと言われるがまま長府へ足を運びそれから萩まで。
体力のない女を連れて京まで戻り,それからまた長州へ。それなのにまた旅立つとは。
「私はホンマにいつもの事やき。そしたら三津さん,幸せに暮らし。」
元気でな。ではなく,幸せに。どう言う意図か分からなかったが力強く頷いた。中岡を見送った三津はひとまずお店に向かう事にした。無事帰って来た報告と明日からまた働けると伝える為に。
「ただいま戻りましたー。」
暖簾をくぐると思わぬ人物達と目が合った。
「あっ!姉上お帰りなさいませ!」
「良かった!帰って来られたんやね!」
「フサちゃん?すみさん?」
襷掛けに前掛け姿の二人がお帰りお帰りと三津に抱きついた。
「お三津ちゃんおらん間働いてくれとったそ。お三津ちゃん,お帰り。お疲れ様。」
穏やかな笑顔のしずに三津は目を潤ませながらただいまと答えた。
「お帰り。大事ないか?」
「一之助さん,ただいま。大丈夫です。元気です。」
三津がふにゃっとした笑顔になったのを見て,一之助も微かに笑みを浮かべた。
「お帰りお三津ちゃん!大変やったなぁ!昔の男がお三津ちゃん連れて来いって駄々こねて騒いだって。」
『あぁ,そういう事になってるのね。』
客にかけられた言葉に苦笑いでそうなのとだけ答えた。
「三津さん引く手数多やけぇね。その男も独占欲強くて未練たらたらで情けない。」
『中岡さん,私より辛辣な方がここに居ますよ。』
私なんか辛辣なうちに入らないよと三津は思う。三津の中ですみと文は最強だ。
「それでかたは付いたん?」
「はい,もう最後だってちゃんと告げてみんなにも迷惑かけないように言っておきました。」
それを聞いた一之助とすみとフサは顔を見合った。
三津は流されずに帰って来た。しっかりと決別してきた。
三津さんがおらんと空っぽで湯呑みの役割すら果たせん。」
「役立たずですね。」
「辛辣やのぉ。」
中岡はまぁ待てと話を続けた。
「じゃけん桂さんを使える湯呑みに出来るのは三津さんだけや。」
「幾松さんだって注いでくれますよ。」
「あの人は徳利じゃ。湯呑みは酒を注いで欲しくない。」 https://mathewanderson.animech.net/Entry/3/ https://anderson.cosplay-navi.com/Entry/5/ https://carinaa.blog-mmo.com/Entry/3/
三津はうーんと唸った。中岡の喩えが分かるような分からないような。
徳利の中身を入れ替えたらいいとか,湯呑みからお猪口に成り変わればいいとか屁理屈ばかり浮かんでくる。
「そんなに寄りを戻したくないんか?」
だからそんなに否定的なのか?と中岡は三津に詰め寄った。喩えが三津に伝わらなかったのが悔しいのか必死だった。
「あー……そうなのかもしれません。」
「それは入江君がおるからか?」
「いやぁ……九一さん居なくても寄りを戻すかは……。居なきゃ居ないで文さん達と女同士でわいわいしてるのが楽しいですし。」
「とうとう男は必要とされんくなるのか……。」
それは辛いとしょんぼりしたので,私がそう思うだけだと言っておいた。中岡が気に病む事ではない。
「三津さん今の暮らしが気に入っとるん?」
「はい。楽しいです。気が楽です。自分の事だけに集中出来ますから。」
中岡は目を細めてそうかと呟き,それ以後桂の話は出さなかった。
「あー帰って来たぁ……。」
萩の匂いだと空気を肺いっぱいに吸い込んだ。どんな匂いかは喩え難いが京とは全く違う澄んだ空気だ。
「いやぁお疲れやったな!」
中岡はちょっとした楽しい旅行だったと言わんばかりの笑顔で三津の頭を撫で回した。
いつも思うが赤禰にしろ中岡にしろ,何故そんなに犬を扱うように触るのか。
「中岡さんは今日はこちらに泊まっていかはるの?」
「いや,これから坂本と落ち合うけんこのまま次に行く。」
「え!?このまま!?」
ちょっとぐらい休めばいいのにと言ってみたが,中岡はいつもの事だとにっと笑った。
「ホンマに助かった!ありがとう!」
「いえいえ,中岡さんこそお疲れ様ですよ。」
自分を京に連れて来いと言われるがまま長府へ足を運びそれから萩まで。
体力のない女を連れて京まで戻り,それからまた長州へ。それなのにまた旅立つとは。
「私はホンマにいつもの事やき。そしたら三津さん,幸せに暮らし。」
元気でな。ではなく,幸せに。どう言う意図か分からなかったが力強く頷いた。中岡を見送った三津はひとまずお店に向かう事にした。無事帰って来た報告と明日からまた働けると伝える為に。
「ただいま戻りましたー。」
暖簾をくぐると思わぬ人物達と目が合った。
「あっ!姉上お帰りなさいませ!」
「良かった!帰って来られたんやね!」
「フサちゃん?すみさん?」
襷掛けに前掛け姿の二人がお帰りお帰りと三津に抱きついた。
「お三津ちゃんおらん間働いてくれとったそ。お三津ちゃん,お帰り。お疲れ様。」
穏やかな笑顔のしずに三津は目を潤ませながらただいまと答えた。
「お帰り。大事ないか?」
「一之助さん,ただいま。大丈夫です。元気です。」
三津がふにゃっとした笑顔になったのを見て,一之助も微かに笑みを浮かべた。
「お帰りお三津ちゃん!大変やったなぁ!昔の男がお三津ちゃん連れて来いって駄々こねて騒いだって。」
『あぁ,そういう事になってるのね。』
客にかけられた言葉に苦笑いでそうなのとだけ答えた。
「三津さん引く手数多やけぇね。その男も独占欲強くて未練たらたらで情けない。」
『中岡さん,私より辛辣な方がここに居ますよ。』
私なんか辛辣なうちに入らないよと三津は思う。三津の中ですみと文は最強だ。
「それでかたは付いたん?」
「はい,もう最後だってちゃんと告げてみんなにも迷惑かけないように言っておきました。」
それを聞いた一之助とすみとフサは顔を見合った。
三津は流されずに帰って来た。しっかりと決別してきた。
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18:33
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「謝らんでいい。
2024年04月12日
「謝らんでいい。三津の方から言ってくれたのが本当に嬉しいそっちゃ。抱きしめながら寝てもいい?」
入江はおいでと三津に向かって両手を伸ばした。少し赤くなった顔で目を泳がせて,小さく頷いた。
入江は自分の布団の中に入って掛け布団を捲った。これが一緒に寝ようのお誘いの合図になった。
三津は体を起こして布団から出て,遠慮がちに入江の布団に入った。
「お帰り,三津。」
やっぱり触れて温もりを感じ,匂いを吸い込むと愛おしさが溢れ出す。
会えなくて寂しくても時間が経てばやがて慣れる。だけどその分,会うと離れる前よりも愛おしさが増している。
寂しさに慣れていたんじゃなくてただ忍耐強くなっていただけ。会えない時の寂しさは募る愛情に姿を変えた。
だから今,耐えた分だけ三津を愛したくて仕方ない。
だけど三津の疲労具合を考えるとこうして抱きしめるに留めた方がいい。
「そうや。一之助君と二人で初詣行ったんやな。」 https://edward.ni-3.net/Entry/4/ https://anosmic.animegoe.com/Entry/4/ https://mypaper.pchome.com.tw/johnsmith786/post/1381775294
理性を保つ為に話題を変えた。三津から届いた文と,文からの密告書に書かれていた初詣の話題を出した。
昨年は二人で行った。一昨年は斎藤と一緒だったのを尾行してた。
あの時では考えられない今の状態に入江はくすりと笑った。「お参りして甘酒飲みました。それだけやったんですけど町中の噂になりました。」
何でそんなに騒ぐんですかね?とこればっかりは理解出来ないと首を傾げた。
「多分一之助君が女子を寄せ付けんのに三津は特別やからやろ。武人さんが女子と二人で町歩いとったら珍しくない?」
「あ!分かる!」
入江はそれと同じで,なんなら一之助は女子と喋ってるところすら滅多に見ないんだと教えてやった。三津はそんなに珍しい事だったのかとようやく理解した。
「すみは元気にしとる?」
「元気ですよー!よく一緒に夕餉食べてます。相変わらず愚兄愚兄って言ってますけど,ホンマに嫌いなら話題にすら出したくないはずやから九一さん好かれてますね。」
「そうかぁ?妹のくせに敬意が足りとらん。」
二人は他愛もない近況報告で会話を楽しんでいた。外でこっそり様子を窺っていた幾松と白石は,進展具合を確認したかったのに二人にその気配はない。
これはそっとしておこう。二人は静かにその場を去った。
『……やっと居なくなった。』
入江は楽しそうにすみや文との日常を話す三津の頭を優しく撫でた。その手を頬に滑らせてから顎に添えた。
くいっと顎を持ち上げられた三津は口を結んで目を伏せた。
「何でまだ一緒に居たいって言ってくれたん?」
「九一さんと居ると落ち着くし離れたくないって思ったから……でも九一さん引き止めてくれんかった……。」
上目で拗ねたような顔をした。冗談でもここに居りと言って欲しかったのと心内を吐露した。
入江は身震いした。自分が引き止めるのを待っていた三津が愛らしい。
「何でそんな可愛い事言うん?抱きたくなるやんか。我慢しとるのに。」
どうしてくれるんだときつく抱きしめた。それが嬉しかった三津は同じぐらい強い力を腕に込めた。
「我慢してるん?」
「するわ。あんな痕つけられるぐらいの事されとるのにそれから更に抱くのは気が引ける。三津の体が心配やけぇ。」
でも本当は抱きたくて堪らないと消え入りそうな声で呟いた。
どこまでも自分を一番に考えてくれる入江に胸が高鳴る。愛されてるってこんな感じだったなと思い出した感じがした。
「九一さん……。ありがと。」
幸せに溶けたような笑顔で入江を見上げた。
「口づけしてもいい?」
「お互い好きやのに許可いる?」
「いらんな。」
重ねては離して繰り返される口づけはだんだん深くなった。
「ごめん耐えれん。優しくするから許して。」
入江は三津に覆い被さり,三津は両手で顔を隠して頷いた。
入江はおいでと三津に向かって両手を伸ばした。少し赤くなった顔で目を泳がせて,小さく頷いた。
入江は自分の布団の中に入って掛け布団を捲った。これが一緒に寝ようのお誘いの合図になった。
三津は体を起こして布団から出て,遠慮がちに入江の布団に入った。
「お帰り,三津。」
やっぱり触れて温もりを感じ,匂いを吸い込むと愛おしさが溢れ出す。
会えなくて寂しくても時間が経てばやがて慣れる。だけどその分,会うと離れる前よりも愛おしさが増している。
寂しさに慣れていたんじゃなくてただ忍耐強くなっていただけ。会えない時の寂しさは募る愛情に姿を変えた。
だから今,耐えた分だけ三津を愛したくて仕方ない。
だけど三津の疲労具合を考えるとこうして抱きしめるに留めた方がいい。
「そうや。一之助君と二人で初詣行ったんやな。」 https://edward.ni-3.net/Entry/4/ https://anosmic.animegoe.com/Entry/4/ https://mypaper.pchome.com.tw/johnsmith786/post/1381775294
理性を保つ為に話題を変えた。三津から届いた文と,文からの密告書に書かれていた初詣の話題を出した。
昨年は二人で行った。一昨年は斎藤と一緒だったのを尾行してた。
あの時では考えられない今の状態に入江はくすりと笑った。「お参りして甘酒飲みました。それだけやったんですけど町中の噂になりました。」
何でそんなに騒ぐんですかね?とこればっかりは理解出来ないと首を傾げた。
「多分一之助君が女子を寄せ付けんのに三津は特別やからやろ。武人さんが女子と二人で町歩いとったら珍しくない?」
「あ!分かる!」
入江はそれと同じで,なんなら一之助は女子と喋ってるところすら滅多に見ないんだと教えてやった。三津はそんなに珍しい事だったのかとようやく理解した。
「すみは元気にしとる?」
「元気ですよー!よく一緒に夕餉食べてます。相変わらず愚兄愚兄って言ってますけど,ホンマに嫌いなら話題にすら出したくないはずやから九一さん好かれてますね。」
「そうかぁ?妹のくせに敬意が足りとらん。」
二人は他愛もない近況報告で会話を楽しんでいた。外でこっそり様子を窺っていた幾松と白石は,進展具合を確認したかったのに二人にその気配はない。
これはそっとしておこう。二人は静かにその場を去った。
『……やっと居なくなった。』
入江は楽しそうにすみや文との日常を話す三津の頭を優しく撫でた。その手を頬に滑らせてから顎に添えた。
くいっと顎を持ち上げられた三津は口を結んで目を伏せた。
「何でまだ一緒に居たいって言ってくれたん?」
「九一さんと居ると落ち着くし離れたくないって思ったから……でも九一さん引き止めてくれんかった……。」
上目で拗ねたような顔をした。冗談でもここに居りと言って欲しかったのと心内を吐露した。
入江は身震いした。自分が引き止めるのを待っていた三津が愛らしい。
「何でそんな可愛い事言うん?抱きたくなるやんか。我慢しとるのに。」
どうしてくれるんだときつく抱きしめた。それが嬉しかった三津は同じぐらい強い力を腕に込めた。
「我慢してるん?」
「するわ。あんな痕つけられるぐらいの事されとるのにそれから更に抱くのは気が引ける。三津の体が心配やけぇ。」
でも本当は抱きたくて堪らないと消え入りそうな声で呟いた。
どこまでも自分を一番に考えてくれる入江に胸が高鳴る。愛されてるってこんな感じだったなと思い出した感じがした。
「九一さん……。ありがと。」
幸せに溶けたような笑顔で入江を見上げた。
「口づけしてもいい?」
「お互い好きやのに許可いる?」
「いらんな。」
重ねては離して繰り返される口づけはだんだん深くなった。
「ごめん耐えれん。優しくするから許して。」
入江は三津に覆い被さり,三津は両手で顔を隠して頷いた。
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三津がまだ誰にも汚されてないと知って
2024年04月12日
三津がまだ誰にも汚されてないと知って少し気持ちに余裕は出たが体の疼きは止まらない。
恥ずかしいから灯りは消してくれと言う三津の願いを桂はいつも聞かない。
恥じらいながら悶える顔が見たいから。
でも今日は灯りを消した。ほんのりとした月明かりだけで三津を抱いた。
必死に堪えながら時折洩らす声と息遣いでその表情がはっきりと浮かぶ。
これで最後なら受け止めてと手加減はしなかった。
もう無理だと逃げだそうとする腰を押さえつけて離さなかった。
「三津,嘘でもいい。私を好きだと言って欲しい。」
冷静になれないぐらい乱されて,それでもまだ止まらない律動に三津は必死に桂にしがみついた。
「すっ……きぃっ……。」
意識が飛びそうで目の前の肩に噛みついた。その痛みさえ愛おしくて桂は目を細めた。https://carina.asukablog.net/Entry/5/ https://johnn.3rin.net/Entry/5/ https://paul.animech.net/Entry/4/
「ありがとう。愛してるよ。ずっと……。
三津,覚えていて。私にとって君は最後の人だ。もう他の人には触れない。君への想いに終わりはない。」
「嘘っ……つきっ。誰でも抱けるっ癖にっ!」
余裕がないながらに精一杯の悪態をついた。そう言えばむきになって自分の好きな所を並べてくれると思った。そんな事したって後で虚しくなるだけなのに。
「もう抱かない,この先君が離れようとも私は誰にも触れないと約束する。だから朝が来るまでは私の事を好きでいて。」
どうせそんな約束守れない。誰にも触れないなんて絶対無理だ。
もう終わるのだからそっちも勝手に生きてくれたらいいと思うのに,それを守って欲しい,私を忘れないでと真逆な事も思ってる。
ずっと耳元で愛してるを繰り返してくれる桂に,
「小五郎さん……今までありがと……。」
愛の言葉じゃなくて感謝の気持ちを,その一言だけを贈った。
日も昇らぬ薄暗い部屋で三津は怠い体を起こした。隣りで眠る桂を起こさぬようにそっと布団を抜け出した。
『起きれて良かった……。』
一切の容赦もなく,今まで溜めた欲をぶつけられた感じで全ての体力を持ってかれた。
そして身支度を整える為に鏡台の前に立ち愕然とした。首筋や胸元が痣だらけだ。
『これは襟巻で隠すしか……。』
着物を着て首に襟巻をして三津は家を出た。体中が違和感だらけで動くのが非常に辛い。
「女中さんは時間にきっちりしとるのぉ。」
玄関を出たところで白い息を吐きながらおはようと中岡に声をかけられた。
「早朝にすみません……。」
「構わん約束やき。それにこの時刻なら新選組にも見つからんやろう。そしたら帰ろうか。」
三津は黙って頷いた。「桂さんに最後の挨拶は?」
中岡の言葉に小さく首を横に振った。中岡はそれに対してそうかとだけ小さく呟いた。
薄暗い道を静かに歩いた。肌を刺すような寒さは萩とどこか違うなぁと三津はぼんやり考えた。
これから大阪まで向かいまた舟で長州へ帰る。阿弥陀寺に寄ってみんなに会って帰ろうか。突然訪ねたらみんなは迷惑だろうか。だったら真っ直ぐ萩に帰ろうか。
どっちにしろなるべく早く帰らなきゃと思うのだが,
「三津さんもしかしてやけど……全然体力ない……?」
中岡が足を止め三津をじっと見下ろした。三津は襟巻の中に顔を隠してこくこく頷いた。思うように歩けない事に気付かれていた。
「そうか。最後の挨拶は昨晩存分にしとるんやな。」
中岡に喉を鳴らして笑われて恥ずかしくて死にそうだ。
「ホンマにもう最後なんで……。もう会う事ないんで……。次はもう絶対呼びに来んとって下さい……。」
「でも分かったやろ?桂さん動かせるのは三津さんだけや。坂本と私やったらあと何日費やさんといけんかったか。三津さんは必要とされちゅうき。」
お似合いやでと笑顔で言われた。思い返せば中岡は初めて会った時も自分と桂は不釣り合いとは言わなかった。それがとても嬉しかったのを思い出した。
「でももう無理なんです……。あれこれ考え過ぎて疲れちゃうんですよ……。」
何があっても傍に居たい気持ちより傷つきたくない思いの方が勝った。一途に想う純粋さだけあればいいのに,目に見えない部分を不安に思い,見えない相手に嫉妬を抱く自分が醜くて怖ろしくて嫌いだ。
恥ずかしいから灯りは消してくれと言う三津の願いを桂はいつも聞かない。
恥じらいながら悶える顔が見たいから。
でも今日は灯りを消した。ほんのりとした月明かりだけで三津を抱いた。
必死に堪えながら時折洩らす声と息遣いでその表情がはっきりと浮かぶ。
これで最後なら受け止めてと手加減はしなかった。
もう無理だと逃げだそうとする腰を押さえつけて離さなかった。
「三津,嘘でもいい。私を好きだと言って欲しい。」
冷静になれないぐらい乱されて,それでもまだ止まらない律動に三津は必死に桂にしがみついた。
「すっ……きぃっ……。」
意識が飛びそうで目の前の肩に噛みついた。その痛みさえ愛おしくて桂は目を細めた。https://carina.asukablog.net/Entry/5/ https://johnn.3rin.net/Entry/5/ https://paul.animech.net/Entry/4/
「ありがとう。愛してるよ。ずっと……。
三津,覚えていて。私にとって君は最後の人だ。もう他の人には触れない。君への想いに終わりはない。」
「嘘っ……つきっ。誰でも抱けるっ癖にっ!」
余裕がないながらに精一杯の悪態をついた。そう言えばむきになって自分の好きな所を並べてくれると思った。そんな事したって後で虚しくなるだけなのに。
「もう抱かない,この先君が離れようとも私は誰にも触れないと約束する。だから朝が来るまでは私の事を好きでいて。」
どうせそんな約束守れない。誰にも触れないなんて絶対無理だ。
もう終わるのだからそっちも勝手に生きてくれたらいいと思うのに,それを守って欲しい,私を忘れないでと真逆な事も思ってる。
ずっと耳元で愛してるを繰り返してくれる桂に,
「小五郎さん……今までありがと……。」
愛の言葉じゃなくて感謝の気持ちを,その一言だけを贈った。
日も昇らぬ薄暗い部屋で三津は怠い体を起こした。隣りで眠る桂を起こさぬようにそっと布団を抜け出した。
『起きれて良かった……。』
一切の容赦もなく,今まで溜めた欲をぶつけられた感じで全ての体力を持ってかれた。
そして身支度を整える為に鏡台の前に立ち愕然とした。首筋や胸元が痣だらけだ。
『これは襟巻で隠すしか……。』
着物を着て首に襟巻をして三津は家を出た。体中が違和感だらけで動くのが非常に辛い。
「女中さんは時間にきっちりしとるのぉ。」
玄関を出たところで白い息を吐きながらおはようと中岡に声をかけられた。
「早朝にすみません……。」
「構わん約束やき。それにこの時刻なら新選組にも見つからんやろう。そしたら帰ろうか。」
三津は黙って頷いた。「桂さんに最後の挨拶は?」
中岡の言葉に小さく首を横に振った。中岡はそれに対してそうかとだけ小さく呟いた。
薄暗い道を静かに歩いた。肌を刺すような寒さは萩とどこか違うなぁと三津はぼんやり考えた。
これから大阪まで向かいまた舟で長州へ帰る。阿弥陀寺に寄ってみんなに会って帰ろうか。突然訪ねたらみんなは迷惑だろうか。だったら真っ直ぐ萩に帰ろうか。
どっちにしろなるべく早く帰らなきゃと思うのだが,
「三津さんもしかしてやけど……全然体力ない……?」
中岡が足を止め三津をじっと見下ろした。三津は襟巻の中に顔を隠してこくこく頷いた。思うように歩けない事に気付かれていた。
「そうか。最後の挨拶は昨晩存分にしとるんやな。」
中岡に喉を鳴らして笑われて恥ずかしくて死にそうだ。
「ホンマにもう最後なんで……。もう会う事ないんで……。次はもう絶対呼びに来んとって下さい……。」
「でも分かったやろ?桂さん動かせるのは三津さんだけや。坂本と私やったらあと何日費やさんといけんかったか。三津さんは必要とされちゅうき。」
お似合いやでと笑顔で言われた。思い返せば中岡は初めて会った時も自分と桂は不釣り合いとは言わなかった。それがとても嬉しかったのを思い出した。
「でももう無理なんです……。あれこれ考え過ぎて疲れちゃうんですよ……。」
何があっても傍に居たい気持ちより傷つきたくない思いの方が勝った。一途に想う純粋さだけあればいいのに,目に見えない部分を不安に思い,見えない相手に嫉妬を抱く自分が醜くて怖ろしくて嫌いだ。
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今まで一切政に口出ししなかった三津が介入
2024年04月05日
今まで一切政に口出ししなかった三津が介入し,さらに西郷の肩を持たれたのが桂にとっては至極気に入らない。
「三津,この話はそんな簡単な物ではない。君が口を出していい話でもない。」
それ聞いた三津は頬に手を当てて溜息をついた。
「女の事は平気で何ヶ月も待たせる癖に小五郎さんはたった一日も待たれへんのですね。」
その言葉に高杉と入江は凍りついた。いくら三津でも今の桂の揚げ足を取るのはかなりの危険行為だ。
「三津,それとこれとは話が別だ一緒にするな。」 http://kiya.blog.jp/archives/24361663.html http://hkworld.blogg.se/2024/april/entry-2.html https://blog.aujourdhui.com/jennifer9922/2703361/65378---24112---12387---12390---26469---12383---12425---30290---12420---12375---12390---12418---12425---12360---12427---12384---12429---12358---12363---12290---65379.html
まずい修羅場だ。今回はどうにも出来ないぞと高杉はだらだら冷や汗を掻いて三津を見た。
「は?別?一年近く待たせた挙句裏切った小五郎さんは私からしたらその西郷さんとやってる事一緒ですけど?」
三津は頬に手を当てたままきょとんとした顔で首を右に傾けた。何度も目を瞬かせて何で分からないの?と桂を見ている。
『可愛い顔で喧嘩売った……。』
高杉は頭を抱えた。こう言う場では大人しくしてる三津が喧嘩を売った。もう止められない。入江と高杉は無になって見守る事にした。
「しかし私には事情があって!」
「じゃあその西郷さんにも何か事情があったんちゃいます?ちゃんと事情があれば今回の事は許して話し合いします?
許されへんって言うのなら私が小五郎さんを許せんくても文句ないですよね?」
「今その話を出すのは狡い……。」
「狡い?待たすだけ待たせて裏切って,西郷さんと同じ事してるって教えてあげただけですけど?
それに私の件で害があるとすれば私が嫁に行き遅れるか生涯独り身になるかぐらいなんで大した事ないですからお気になさらず。
でも小五郎さんが話し合いの場に立たへんと長州の行く末はどうなります?それを背負ってるんでしょ?」
桂は必死に返す言葉を探して文とフサは口元を隠して笑った。それから文がすっと右手を上げた。
「桂様,私からもあえて一言言わせていただきます。」
文もあえてを強調して口を挟んだ。文の一言もかなりのズシッとくるから桂ごくりと息を呑んで頷いた。
「長州の為にご尽力くださいませ。」
その一言に全てを詰め込んだ文が格好いいと三津は惚れ惚れした眼差しを向けた。
桂は口をきゅっと結んでまっすぐ自分を見つめてくる文とフサの目をしっかりと見た。
怒りで二人に託された吉田と久坂の想いを忘れてしまっていた。
「……ここ最近君達に思い知らされる事ばかりで本当に情けないとしか言葉が出てこない。」
桂は俯いて口元だけで笑った。
「中岡君からの報せを待つとしよう。坂本君すまない。どうぞ食べてくれ。」
その言葉に坂本はまたにっと笑った。実はかなりの空腹だったとおにぎりに手を伸ばした。桂は三津の味噌汁を口にしてほっと息をついた。
「よし,丸く収まったし呑むか。」
「ええのぉ!」
『また呑むのか……。』
三津は今日は呑まない,もしくは呑んでも寝ないを目標に掲げて文達と広間に酒の用意を持って行った。
だが坂本の話がよほど面白いのか男たちは坂本を囲んで盛り上がっていた。
『今日は無事に終われそうやな。』
お酌も文とフサが引き受けてくれたから三津はお酒のおかわりを用意する為広間と台所を往復するのに徹した。なんて楽な仕事だろう。
そう思っていたがそう簡単にいかないのが人生というものである。
「おぉ!肝の据わったお嬢ちゃん!こっち来て一緒に呑み!お前さん面白いきぃ,ちぃーっと話し相手してくれんが?」
坂本から誘われてしまった。これは断る訳にはいかない。
「少しだけ……。」
少しだけ。そんな言葉は酒の席では通用しない。それに連日の宴会でちょっとばかし呑めるようになってしまったのが良くない。
それでもこのくわっと一気に体温が上がるような喉が焼けるような熱さに三津はくぅーっと目を閉じた。
「美味そうに呑むなぁ。」
坂本さん違うそうじゃない。三津は赤くなった顔を左右に振った。
「せっかくやきもう一杯。」
「坂本さん,三津は下戸なんでそれで終わりで。」
二杯目が注がれたところで桂が止めたが三津はそれなら一杯の時で止めてくれよと上目で睨んだ。
そして二杯目をやけっぱちで呑み干した。
「いい顔しとる。お嬢ちゃん普通の女中さんやないんやな?桂さんに面と向かってあんなん言う娘は中々おらん。」
坂本は豪快に笑って三津の頭を撫で回した。
「三津,この話はそんな簡単な物ではない。君が口を出していい話でもない。」
それ聞いた三津は頬に手を当てて溜息をついた。
「女の事は平気で何ヶ月も待たせる癖に小五郎さんはたった一日も待たれへんのですね。」
その言葉に高杉と入江は凍りついた。いくら三津でも今の桂の揚げ足を取るのはかなりの危険行為だ。
「三津,それとこれとは話が別だ一緒にするな。」 http://kiya.blog.jp/archives/24361663.html http://hkworld.blogg.se/2024/april/entry-2.html https://blog.aujourdhui.com/jennifer9922/2703361/65378---24112---12387---12390---26469---12383---12425---30290---12420---12375---12390---12418---12425---12360---12427---12384---12429---12358---12363---12290---65379.html
まずい修羅場だ。今回はどうにも出来ないぞと高杉はだらだら冷や汗を掻いて三津を見た。
「は?別?一年近く待たせた挙句裏切った小五郎さんは私からしたらその西郷さんとやってる事一緒ですけど?」
三津は頬に手を当てたままきょとんとした顔で首を右に傾けた。何度も目を瞬かせて何で分からないの?と桂を見ている。
『可愛い顔で喧嘩売った……。』
高杉は頭を抱えた。こう言う場では大人しくしてる三津が喧嘩を売った。もう止められない。入江と高杉は無になって見守る事にした。
「しかし私には事情があって!」
「じゃあその西郷さんにも何か事情があったんちゃいます?ちゃんと事情があれば今回の事は許して話し合いします?
許されへんって言うのなら私が小五郎さんを許せんくても文句ないですよね?」
「今その話を出すのは狡い……。」
「狡い?待たすだけ待たせて裏切って,西郷さんと同じ事してるって教えてあげただけですけど?
それに私の件で害があるとすれば私が嫁に行き遅れるか生涯独り身になるかぐらいなんで大した事ないですからお気になさらず。
でも小五郎さんが話し合いの場に立たへんと長州の行く末はどうなります?それを背負ってるんでしょ?」
桂は必死に返す言葉を探して文とフサは口元を隠して笑った。それから文がすっと右手を上げた。
「桂様,私からもあえて一言言わせていただきます。」
文もあえてを強調して口を挟んだ。文の一言もかなりのズシッとくるから桂ごくりと息を呑んで頷いた。
「長州の為にご尽力くださいませ。」
その一言に全てを詰め込んだ文が格好いいと三津は惚れ惚れした眼差しを向けた。
桂は口をきゅっと結んでまっすぐ自分を見つめてくる文とフサの目をしっかりと見た。
怒りで二人に託された吉田と久坂の想いを忘れてしまっていた。
「……ここ最近君達に思い知らされる事ばかりで本当に情けないとしか言葉が出てこない。」
桂は俯いて口元だけで笑った。
「中岡君からの報せを待つとしよう。坂本君すまない。どうぞ食べてくれ。」
その言葉に坂本はまたにっと笑った。実はかなりの空腹だったとおにぎりに手を伸ばした。桂は三津の味噌汁を口にしてほっと息をついた。
「よし,丸く収まったし呑むか。」
「ええのぉ!」
『また呑むのか……。』
三津は今日は呑まない,もしくは呑んでも寝ないを目標に掲げて文達と広間に酒の用意を持って行った。
だが坂本の話がよほど面白いのか男たちは坂本を囲んで盛り上がっていた。
『今日は無事に終われそうやな。』
お酌も文とフサが引き受けてくれたから三津はお酒のおかわりを用意する為広間と台所を往復するのに徹した。なんて楽な仕事だろう。
そう思っていたがそう簡単にいかないのが人生というものである。
「おぉ!肝の据わったお嬢ちゃん!こっち来て一緒に呑み!お前さん面白いきぃ,ちぃーっと話し相手してくれんが?」
坂本から誘われてしまった。これは断る訳にはいかない。
「少しだけ……。」
少しだけ。そんな言葉は酒の席では通用しない。それに連日の宴会でちょっとばかし呑めるようになってしまったのが良くない。
それでもこのくわっと一気に体温が上がるような喉が焼けるような熱さに三津はくぅーっと目を閉じた。
「美味そうに呑むなぁ。」
坂本さん違うそうじゃない。三津は赤くなった顔を左右に振った。
「せっかくやきもう一杯。」
「坂本さん,三津は下戸なんでそれで終わりで。」
二杯目が注がれたところで桂が止めたが三津はそれなら一杯の時で止めてくれよと上目で睨んだ。
そして二杯目をやけっぱちで呑み干した。
「いい顔しとる。お嬢ちゃん普通の女中さんやないんやな?桂さんに面と向かってあんなん言う娘は中々おらん。」
坂本は豪快に笑って三津の頭を撫で回した。
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入江はそのまま広間を覗きに行った。
2024年04月05日
入江はそのまま広間を覗きに行った。そこにはうつ伏せて動かない桂の姿。悲壮感が漂っている。
「桂さん,三津が手が痛いって言っちょるそ。」
「……私のせいだ。」
入江の声に怠そうに体を起こした。胡座を掻いて背中を丸めて入江の方を見やしない。
「知っとる。文句言えんって言いながら何で三津に強く当たるそ?その分三津は桂さんを嫌いになるやろうから私はいいですよ?でも三津はまた痛い思いしちょるんですよ。」
「どうしても……嫉妬が抑えられん……。」 http://hkworld.blogg.se/2024/april/entry.html https://blog.aujourdhui.com/jennifer9922/2703360/25991---12398---35328---33865---12395---19977---27941---12399---38738---12374---12417---12383---38996---12391.html https://yvision.kz/post/976247
「それ三津に説明しました?」
「してない……。」
「じゃあ説明して来てください。好きで好きで堪らんから嫉妬が抑えられんのちゃんと三津に言って。傷付けたの桂さんなんやけぇそこも責任取らんといけん。冷やす用の水持って行ってください。」
「分かった……。」
桂は重い腰を上げて桶に水を張って相部屋に行った。恋敵にそこまで面倒みてもらって情けないの一言だ。
「大丈夫かい?」
入江が戻って来ると思ってた三津はせっかく泣きやんだのに桂を見てまた泣きそうになった。
「手を……すまない……私の方がろくでもない事をしてるのは分かってるのに……君を好きすぎて嫉妬が抑えられないんだ……。小さい男でごめん……。」
桂は痛い手を出してと両手を差し伸べた。三津は目を伏せて右手を出した。
桂はその手を優しく両手で包んだ後に桶の水にそっと浸けさせた。
三津は顔を背けたまま口も堅く結んで桂に息苦しい重圧を与えた。この不穏な空気に耐えかねてさっさと出て行ってほしい。
せっかく忘れかけていた腹立たしさや苛立ちや変えられない過去へのもどかしさが渦巻いて心中穏やかじゃいられない。
そこへ小さな足音が近付いてきた。フサだなと気付いた三津が障子の方に目を向けると姉上と呼び掛けられた。
「どうしたん?」
「あの,湯を沸かし直したんで浸かりませんか?」
「ありがとう,すぐ行くわ。」
フサは外から声を掛けるだけで中には入って来なかった。三津は桶から手を上げて着物の袖で水気を取り,そこに桂がいないかのように湯浴みの用意を持って部屋を出た。
「背中流そうか?」
出てすぐににんまりと笑う入江と鉢合わせた。
「阿呆。」
ふてぶてしく吐き捨てて横を通り過ぎた三津を見送って入江は部屋に入った。
「せっかく修復出来かけてたのに自滅するなんて馬鹿な人だなぁ。」
入江は肩を落として灰になりかけている桂の前に座った。「お前がフサちゃん使って三津を外に出してくれなければ息できなくて死んでたよ……。」
あの無言の時間は苦痛でしかない。あれは私でも耐えられないと入江は笑った。
「私としては明日の件に集中出来るように仲直りしといてほしいんですけど女心は難しいけぇ今回は一旦持ち越すしかなさそうですね。
もう広間に戻ってはよ寝てください。私も今日の山登りで体力使い果たしとるんで眠い……。」
入江は大欠伸をしてから三津が戻るまで起きていられたら機嫌は取っときますよとまた笑った。
「何で恋敵にここまで気を遣われなきゃいけないんだ……。」
「だから敵だと思わず共有する仲間って思ったらどうです?そしたら私が抱いたとしても“三津を悦ばせてくれたんだなぁ。よし次は自分が悦ばそう!”って感じになりません?」
「ならん。」
きっぱりと言い切った桂を頭が固いとからかうように笑った。
「入江さーんちょっといい?」
文の声がしたかと思えば返事をする間もなく障子を開けられた。
「なぁ,せめてどうぞって言われてから開けようや。」
「今日白石さん家に帰るの面倒やけぇ広間でフサちゃんと三津さんと寝るけぇ桂様の布団と三津さんの布団入れ替えていい?」
「人の話聞けや。」
文は入江など目にも留めずいいですか?と桂を見ていた。
「別に構わないが……。」
「私は三津と寝たいけぇ文ちゃんとフサちゃんは桂さんと川の字で寝り。」
「私は大丈夫やけどフサちゃん危ないやん。」
この人十三歳にも手を出すのにと冷たい目で桂を見た。その視線と言葉は容赦なく桂の心を貫いた。
「フサちゃんは桂さんなんかお断りやろ。それに今日は三津抱きたい気分やけぇ邪魔せんで。」
「桂さん,三津が手が痛いって言っちょるそ。」
「……私のせいだ。」
入江の声に怠そうに体を起こした。胡座を掻いて背中を丸めて入江の方を見やしない。
「知っとる。文句言えんって言いながら何で三津に強く当たるそ?その分三津は桂さんを嫌いになるやろうから私はいいですよ?でも三津はまた痛い思いしちょるんですよ。」
「どうしても……嫉妬が抑えられん……。」 http://hkworld.blogg.se/2024/april/entry.html https://blog.aujourdhui.com/jennifer9922/2703360/25991---12398---35328---33865---12395---19977---27941---12399---38738---12374---12417---12383---38996---12391.html https://yvision.kz/post/976247
「それ三津に説明しました?」
「してない……。」
「じゃあ説明して来てください。好きで好きで堪らんから嫉妬が抑えられんのちゃんと三津に言って。傷付けたの桂さんなんやけぇそこも責任取らんといけん。冷やす用の水持って行ってください。」
「分かった……。」
桂は重い腰を上げて桶に水を張って相部屋に行った。恋敵にそこまで面倒みてもらって情けないの一言だ。
「大丈夫かい?」
入江が戻って来ると思ってた三津はせっかく泣きやんだのに桂を見てまた泣きそうになった。
「手を……すまない……私の方がろくでもない事をしてるのは分かってるのに……君を好きすぎて嫉妬が抑えられないんだ……。小さい男でごめん……。」
桂は痛い手を出してと両手を差し伸べた。三津は目を伏せて右手を出した。
桂はその手を優しく両手で包んだ後に桶の水にそっと浸けさせた。
三津は顔を背けたまま口も堅く結んで桂に息苦しい重圧を与えた。この不穏な空気に耐えかねてさっさと出て行ってほしい。
せっかく忘れかけていた腹立たしさや苛立ちや変えられない過去へのもどかしさが渦巻いて心中穏やかじゃいられない。
そこへ小さな足音が近付いてきた。フサだなと気付いた三津が障子の方に目を向けると姉上と呼び掛けられた。
「どうしたん?」
「あの,湯を沸かし直したんで浸かりませんか?」
「ありがとう,すぐ行くわ。」
フサは外から声を掛けるだけで中には入って来なかった。三津は桶から手を上げて着物の袖で水気を取り,そこに桂がいないかのように湯浴みの用意を持って部屋を出た。
「背中流そうか?」
出てすぐににんまりと笑う入江と鉢合わせた。
「阿呆。」
ふてぶてしく吐き捨てて横を通り過ぎた三津を見送って入江は部屋に入った。
「せっかく修復出来かけてたのに自滅するなんて馬鹿な人だなぁ。」
入江は肩を落として灰になりかけている桂の前に座った。「お前がフサちゃん使って三津を外に出してくれなければ息できなくて死んでたよ……。」
あの無言の時間は苦痛でしかない。あれは私でも耐えられないと入江は笑った。
「私としては明日の件に集中出来るように仲直りしといてほしいんですけど女心は難しいけぇ今回は一旦持ち越すしかなさそうですね。
もう広間に戻ってはよ寝てください。私も今日の山登りで体力使い果たしとるんで眠い……。」
入江は大欠伸をしてから三津が戻るまで起きていられたら機嫌は取っときますよとまた笑った。
「何で恋敵にここまで気を遣われなきゃいけないんだ……。」
「だから敵だと思わず共有する仲間って思ったらどうです?そしたら私が抱いたとしても“三津を悦ばせてくれたんだなぁ。よし次は自分が悦ばそう!”って感じになりません?」
「ならん。」
きっぱりと言い切った桂を頭が固いとからかうように笑った。
「入江さーんちょっといい?」
文の声がしたかと思えば返事をする間もなく障子を開けられた。
「なぁ,せめてどうぞって言われてから開けようや。」
「今日白石さん家に帰るの面倒やけぇ広間でフサちゃんと三津さんと寝るけぇ桂様の布団と三津さんの布団入れ替えていい?」
「人の話聞けや。」
文は入江など目にも留めずいいですか?と桂を見ていた。
「別に構わないが……。」
「私は三津と寝たいけぇ文ちゃんとフサちゃんは桂さんと川の字で寝り。」
「私は大丈夫やけどフサちゃん危ないやん。」
この人十三歳にも手を出すのにと冷たい目で桂を見た。その視線と言葉は容赦なく桂の心を貫いた。
「フサちゃんは桂さんなんかお断りやろ。それに今日は三津抱きたい気分やけぇ邪魔せんで。」
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「桂さんも嫌でしょ?練兵館に居た頃に
2024年03月12日
「桂さんも嫌でしょ?練兵館に居た頃に相手した女が追っかけて来て三津さんと遭遇するの。考えただけでも怖いですよね。」
入江は怖いもの見たさでちょっとその修羅場は興味あると笑った。どうせならこっ酷く振られたらいいとまで言った。
「稔麿も九一もくだらん妄想はやめろ……。」
夢に見そうで怖い。それが正夢になっても怖い。
「それで赤子なんざ連れてたら本当に洒落にならんな。」
久坂までその悪い冗談に乗っかった。乗っかったはいいがもし本当にそんな女が赤子と現れたら三津がどれほど傷つくだろうと想像した。
そう思うと物凄く腹が立った。
「本当にそんな女が現れたら貴方の首はねてもいいですか?」 https://mathewanderson.animech.net/Entry/2/ https://anderson.cosplay-navi.com/Entry/3/ https://carinaa.blog-mmo.com/Entry/2/
「玄瑞,勝手に悪い妄想の果てに私の首をはねるなど物騒な事を言うでない。」
余りにも久坂が真剣な顔で言うもんだから桂も内心どきどきした。
「それは置いといて彼女に三津は会わせないと言う事で宜しいですか?」
このままじゃ話が終わらんと吉田がまとめ役に回った。そこで桂もようやく平常に戻った。
「あぁ。それで構わない。だから三津にも彼女が我々を探してるのは伝えなくていい。」
それでこの件は終わりだと解散させられた。
「そう言えば三津さんは?帰って来てから姿もなければ声もしない。」
入江が何で?と首を傾げると久坂と吉田は額に青筋を浮き上がらせた。
「とんだ不届者がいてね。あろう事か三津さんの顔をぶったんだ。だから安静にさせてる。」
「三津さんの顔をぶった?」
入江は瞬きも忘れて静かに怒る久坂の顔を呆然と見つめた。「ぶった奴はすでに桂さんと玄瑞から裁きを受けてるよ。」
入江が戻ってくる四半刻ほど前の出来事だ。杉山から三津に絡んだ奴らを聞き出し,
「最近刀を抜かないから鈍っちゃってね。ちょっと相手してくれないか?」
なんて呼び出して木刀でボッコボコにした後,見計らったように現れた久坂が手当と称して傷口に特製の劇薬を塗り込んだ。
「お陰でしばらくは動けないようだからまた復活した頃に俺と九一がまた罰を与えればいいと思う。
きっと三津は暇してるだろうから見舞いにでも行こうかね。」
「手を上げた理由は?」
屋敷内でそんな愚行を働くなんて命知らずがと入江は心の中で吐き捨てた。前の吉田なら確実に斬り捨ててただろうなと思う。
「三津に対して情婦と罵り桂さんをも愚弄したが反論されて激昂。途中杉山が助けに入ってくれたが少し遅かった。」
吉田は淡々と答えたが思い出すとまた腸が煮えくり返る。親指で鍔を押上げては離してを繰り返していた。
話を聞いて呆然とした入江だったが徐々に怒りが込み上げてきた。
「三津,入るよ。」
「はーい。」
吉田が呼びかけると明るい声と共に障子が開かれた。目の前の三津に入江はくっと喉を鳴らした。
「何処の稚児さんかと……。」
頬には久坂の湿布薬を貼られ,それが落ちないように顎の下から輪郭に沿うように手拭いを当てられて頭の上で結び目が作られていた。
冗談はさておき未だに腫れて見える頬に入江は顔を顰めた。
「聞きましたよ。災難でしたね。守れなくてすみません。」
「入江さんが謝ることやないですよ!私が生意気な口きいたからで!それにもう痛くないですから大丈夫です。」
大丈夫を連呼して笑う三津に三人は自然とほっとしていた。
この笑顔にほんわかした雰囲気に包まれた所に忙しない足音が響いてきた。
「久坂さんいらっしゃいます!?あのアヤメが!
……え?三津さんどうされたんです?」
珍しく慌てた様子のサヤが息を切らして久坂を捕まえた。着物の裾を掴んだまま三津の姿にぽかんとした。
「ちょっと……。それよりアヤメさんがどうかしたんです?」
「あぁ!出先で怪我をしてしまってっ!」
それを聞いて四人は急いでサヤについて玄関へ向かった。そこには三和土に座り込んですすり泣くアヤメが居た。
入江は怖いもの見たさでちょっとその修羅場は興味あると笑った。どうせならこっ酷く振られたらいいとまで言った。
「稔麿も九一もくだらん妄想はやめろ……。」
夢に見そうで怖い。それが正夢になっても怖い。
「それで赤子なんざ連れてたら本当に洒落にならんな。」
久坂までその悪い冗談に乗っかった。乗っかったはいいがもし本当にそんな女が赤子と現れたら三津がどれほど傷つくだろうと想像した。
そう思うと物凄く腹が立った。
「本当にそんな女が現れたら貴方の首はねてもいいですか?」 https://mathewanderson.animech.net/Entry/2/ https://anderson.cosplay-navi.com/Entry/3/ https://carinaa.blog-mmo.com/Entry/2/
「玄瑞,勝手に悪い妄想の果てに私の首をはねるなど物騒な事を言うでない。」
余りにも久坂が真剣な顔で言うもんだから桂も内心どきどきした。
「それは置いといて彼女に三津は会わせないと言う事で宜しいですか?」
このままじゃ話が終わらんと吉田がまとめ役に回った。そこで桂もようやく平常に戻った。
「あぁ。それで構わない。だから三津にも彼女が我々を探してるのは伝えなくていい。」
それでこの件は終わりだと解散させられた。
「そう言えば三津さんは?帰って来てから姿もなければ声もしない。」
入江が何で?と首を傾げると久坂と吉田は額に青筋を浮き上がらせた。
「とんだ不届者がいてね。あろう事か三津さんの顔をぶったんだ。だから安静にさせてる。」
「三津さんの顔をぶった?」
入江は瞬きも忘れて静かに怒る久坂の顔を呆然と見つめた。「ぶった奴はすでに桂さんと玄瑞から裁きを受けてるよ。」
入江が戻ってくる四半刻ほど前の出来事だ。杉山から三津に絡んだ奴らを聞き出し,
「最近刀を抜かないから鈍っちゃってね。ちょっと相手してくれないか?」
なんて呼び出して木刀でボッコボコにした後,見計らったように現れた久坂が手当と称して傷口に特製の劇薬を塗り込んだ。
「お陰でしばらくは動けないようだからまた復活した頃に俺と九一がまた罰を与えればいいと思う。
きっと三津は暇してるだろうから見舞いにでも行こうかね。」
「手を上げた理由は?」
屋敷内でそんな愚行を働くなんて命知らずがと入江は心の中で吐き捨てた。前の吉田なら確実に斬り捨ててただろうなと思う。
「三津に対して情婦と罵り桂さんをも愚弄したが反論されて激昂。途中杉山が助けに入ってくれたが少し遅かった。」
吉田は淡々と答えたが思い出すとまた腸が煮えくり返る。親指で鍔を押上げては離してを繰り返していた。
話を聞いて呆然とした入江だったが徐々に怒りが込み上げてきた。
「三津,入るよ。」
「はーい。」
吉田が呼びかけると明るい声と共に障子が開かれた。目の前の三津に入江はくっと喉を鳴らした。
「何処の稚児さんかと……。」
頬には久坂の湿布薬を貼られ,それが落ちないように顎の下から輪郭に沿うように手拭いを当てられて頭の上で結び目が作られていた。
冗談はさておき未だに腫れて見える頬に入江は顔を顰めた。
「聞きましたよ。災難でしたね。守れなくてすみません。」
「入江さんが謝ることやないですよ!私が生意気な口きいたからで!それにもう痛くないですから大丈夫です。」
大丈夫を連呼して笑う三津に三人は自然とほっとしていた。
この笑顔にほんわかした雰囲気に包まれた所に忙しない足音が響いてきた。
「久坂さんいらっしゃいます!?あのアヤメが!
……え?三津さんどうされたんです?」
珍しく慌てた様子のサヤが息を切らして久坂を捕まえた。着物の裾を掴んだまま三津の姿にぽかんとした。
「ちょっと……。それよりアヤメさんがどうかしたんです?」
「あぁ!出先で怪我をしてしまってっ!」
それを聞いて四人は急いでサヤについて玄関へ向かった。そこには三和土に座り込んですすり泣くアヤメが居た。
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