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まだ少し聞きたそうにしていた生徒も、反対すること

2020年05月08日

" まだ少し聞きたそうにしていた生徒も、反対することなく頷いた。
ツァイは目線でルークに礼を告げて、話を本筋に戻す。

「実行委員だけど、数は2名。仕事はさっき言った種目の連絡とか、代表者決めとか、クか、クラスと実技披露会の橋渡し的なことと、前日までに準備や、当日は運営の裏方」

これを聞いた誰かが、思わず「げ」と呻いた。
なんというか、その名の予想に違わず、という感じの内容だ。

やりがいはあるのかもしれないが、もの凄く、面倒そう。
やる気のない人間は、漏れなく同じことを考えたに違いなかった。

「さて。一応、聞くわね。
立候補は居る?」

居なければ自動的に籤引きだ。
どうせいないだろうと言う判断か、ルークがその辺りにあった紐を切り始めた。
人数が多いため少々手は掛かるが、何人かでじゃんけんの後不運な代表者が籤引き――が、大体のセオリーだ。

これまでのちょっとした「お手伝い」や「掃除当番」とは違って規模があるので、皆籤を見る目付きが違う。

だが、しかし。

この後、誰もが予想していなかったたった一言で、この空気が180度引っ繰り返ることになる。

おずおずと、手を挙げたのはいつも然程目立たない、1人の女生徒。

ノノ・イーリーが、小さな声でこう言ったのだ。

「あっあの……わたし、皇子と一緒に、やりたいです…」

青天の霹靂だった。

「へ……俺?」

目を瞠ったハルが、かなりまぬけな声を出す。

その、瞬間。

女子諸君の目の色が、がらりと変わった。

「っ、あ、あたしも!」
「ちょっと待って、なら私も……」
「私、エートくんとがいいかも」
「あ、ずるい」
「カレナくんとかルークくんとでも、こういうの楽しそうじゃない?」
「でも、やっぱり皇子じゃない!?」
「一生一度の思い出に……いいかも」

あっと言う間に教室内にはピンク色の歓声が溢れ、我も我もと声が挙がる。

気分はすっかり一夏のアバンチュール……流石に古いな、この言い方。
兎にも角にも、こんな機会は滅多にない!という意気込みだ。

まあ確かに、2人での作業は多くなるだろうし、親密度は上がるだろう。
多少慣れたとは言え、ハルは正真正銘「皇子様」だ。
こんな機会でもなければ、長く2人で過ごすことなどないのも、事実。

そういう意味では、ツァイとククルは嫉妬を受けても可笑しくない。

……ん?

そこまで、考えて。
「嫉妬」というキーワードが、何かに当てはまったような気がして首を傾げる。"



Posted by AmandaMonroe at 04:15│Comments(0)
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